1996 Fiscal Year Annual Research Report
生体酸化と中枢神経細胞内Ca^<2+>濃度およびニューロトランスミッター遊離の変動
Project/Area Number |
08672134
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
西川 殷維 鹿児島大学, 歯学部, 教授 (10034191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康一 鹿児島大学, 歯学部, 助手 (30274848)
鎌田 佳子 鹿児島大学, 歯学部, 助手 (60185973)
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Keywords | NO発生薬 / NO酸化派生物質 / (Na^++K^+)-ATPase 活性 / 大脳皮質 / SH-化合物 / 遊離Ca^<2+> |
Research Abstract |
(Na^+,K^+)-ATPaseは生体膜のナトリウムポンプとして機能しており、静止膜電位の調節、neurotransmittersの遊離調節や細胞内水分量の調節に関与している。一方、nitric oxide (NO)は、中枢神経系において、neurotransmittersの遊離や長期増強作用・長期抑制作用の他・脳虚血時の細胞障害・細胞死に関与することが示唆されている。本研究では、ブタ大脳皮質の膜成分より精製した(Na^+,K^+)-ATPase 活性に対する各種NO発生薬の影響について検討し、以下の結果を得た。(1)現在、一般に使用されている各種のNO発生薬は濃度・時間依存的に(Na^++K^+)-ATPase活性を抑制し、NOスカベンジャーはこれら抑制作用を阻害した。(2)sulfhydryl(SH)-compoundsや抗酸化剤であるascorbic acid(VC)はNO発生薬による本酵素活性の抑制を阻害したが、脂質の抗酸化剤である alpha tocopherol (VE)では阻害しなかった。(3)NOを特異的に消去し nitrogen dioxide radical を生成させる薬物carboxyphenyl-tetramethylimidazoline-1-oxyl-3-oxide(PTIO)はNO発生薬による本酵素活性の抑制作用を増強した。(4)incubation medium中の遊離Ca^<2+>濃度が静止状態の細胞内濃度以上(7.5×10^<-7>M)になるとSH-compounds の抑制阻害作用が減弱した。(5)NO発生薬やPTI0との併用による本酵素活性の抑制をSH-compounds は回復させたが、NO スカベンジャー、VC や VEでは回復させなかった。 以上の結果、NO発生薬は、NO や NO 派生物質(nitrogen dioxide radical および peroxynitrite)が、酵素蛋白の活性中心であるSH基を酸化することにより、(Na^+,K^+)-ATPase 活性を抑制することを示唆し、併せて細胞内遊離Ca^<2+>が増加すると SH-compounds の抑制阻害作用が減弱することを示唆した。
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