1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08672163
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
工藤 啓吾 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (30048300)
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Keywords | 口腔癌 / 5′-Nase-ALPase二重染色法 / リンパ管 / 浸潤様式 / 頸部リンパ節転移 |
Research Abstract |
頸部リンパ節転移の機構を解明するために、今回、口腔領域の扁平上皮癌一次症例患者を対象に5′-nucleotidase-alkaline phosphatase(5′Nase-ALPase)二重染色を用いた酵素組織化学的染色法により、腫瘍周囲のリンパ管とリンパ節転移との関係を追及した。 当科外来を受診した口腔扁平上皮癌一次症例患者のうち酵素組織化学的染色が可能であった23名を対象とした。採取した生検材料に5′Nase-ALPase二重染色を施し、染色されたリンパ管を光学顕微鏡下で観察し、リンパ管の口径を計測してそれぞれT分類(TNM分類,UICC,1987年)、組織学的分化度(WHO)、浸潤様式(Jakobsson)との関連性について統計処理を行い、比較検討した。なお、本実験では先に行った動物実験と同条件で5′-Nase-ALPase染色を行った。 その結果、ヒト生検においてもリンパ管を鮮明に染色することができた。腫瘍周囲のリンパ管の口径は非腫瘍組織のそれに比べて有意に増大(P<0.01)していた。また、リンパ管の口径はP<0.01で浸潤様式と有意に関連性が見られた。その反面、T分類、組織学的分化度とは関連性は見られなかった。また浸潤様式と頸部リンパ節転移の発生率との関係については、それぞれGrade2が40.0%、Grade3が71.4%、Grade4が75.0%であった。 以上、浸潤様式のGradeが進むに従って、リンパ管の口径が増大し、それに伴い所属リンパ節への転移率の高まることが明らかとなった。このことは、リンパ管の口径とリンパ節転移とが密接に関連しており、浸潤様式と併せてリンパ管の口径もリンパ節転移を予測する重要な因子であることを示唆している。5′-Nase-ALPase二重染色法は短時間で標本の作製が可能であり、リンパ管の変化を早期に把握することができる。従って、本染色法によるリンパ管の同定はリンパ節転移および予後を検討する上で臨床的にもきわめて有意な所見であることを示している。
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Research Products
(1 results)