1996 Fiscal Year Annual Research Report
3次元細胞培養法を応用したエナメル上皮腫と扁平上皮癌の顎骨吸収に関する研究
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08672281
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 章裕 北海道大学, 歯学部, 助手 (50205093)
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Keywords | 3次元培養 / 扁平上皮癌 / MMPs / E1AF |
Research Abstract |
臨床材料における扁平上皮癌の増殖,浸潤・転移能を検索する前段階として,まず,株化された数種の内腔扁平上皮癌由来細胞を用いて,MMPsやMMPsの転写因子E1AFの発現をNorthern blot法により検索した.浸潤性増殖を示すcell lineではMMPsの発現が強く,また,転写因子E1AFのmRNAレベルも上昇していた.これらの細胞は基底膜成分であるType IVコラーゲンを基質とするコラーゲンゲルを用いた3次元培養raft cultureにおいても浸潤性増殖を示した,次に口腔扁平上皮癌におけるE1AFの発現とその臨床的意義を検索する目的で,以下の検索を行った.本学部付属病院口腔外科において扁平上皮癌と診断された患者27人の生検材料を迅速凍結した後Trizolを用いてRNAを抽出し、RT-PCR, Southern blot法, in situ hybridizationによりE1AFの発現を検索した.生検材料の一部は通法に従い組織学的検索を行った.E1AFの発現の有無と臨床病理学的パラメーターとの比較検討を行った.27例のうち15例(55%)にE1AFの発現が認められ, in situ hybridizationによりその発現は腫瘍細胞に局在していることが確認された.組織学的にはE1AFの発現がみられた症例の76%が浸潤性増殖を示していたのに対して発現のみられなかった症例では80%が膨張性増殖をしめしており,E1AF陽性例に有為に浸潤性増殖を示すものが多かった.また,リンパ節転移を認めた症例にE1AF陽性例が多いという傾向もみられた(96年口腔外科学会総会において発表).以上よりE1AFはMMPsの転写を亢進することにより腫瘍の浸潤・転移に深く関与しているものと思われた.今後,口腔扁平上皮癌さらにエナメル上皮腫の多様な性質の解析を行ううえでの有用な因子になりうるものと思われる。
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