1996 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半におけるMaxwell電磁理論の確立過程に関する研究
Project/Area Number |
08680082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Women's Junior College |
Principal Investigator |
岡本 正志 大阪女子短期大学, 教授 (70149558)
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Keywords | マクスウェル理論 / 電磁気学史 / オリバー・ロッジ / マクスウェリアン / 科学理論 / 科学者社会 / 19世紀物理学 / STS |
Research Abstract |
これまでのわが国の電磁気学研究では,Maxwellが彼の電磁理論を提出してから,それが社会的認知をうけるまでの状況についてはほとんど論じられていない。本研究では,科学理論が科学者社会の中でどのように確立してゆくかという点に焦点がおかれており,この意味で,不十分ながらもわが国の電磁気学史研究に一石を投ずることになりうると自覚している。 今年度は,Maxwell電磁理論の確立に大きな役割を果たしたマクスウェリアンの中で,特にオリバー・ロッジについて調査した。ロッジに関する研究はわが国では皆無であり,コヒーラの発明などについてわずか触れられるだけである。もちろん彼に関する詳しい資料も存在しない。そこで,最近の欧米におけるロッジをはじめとするマクスウェリアンミンガム大学などに存在する彼の研究ノートや書簡など,膨大なマニュスクリプト類を調査してきた。また,Dr.Peter RowlandsやDr.David Edwardら英国でのロッジ研究の代表的な研究者との意見交換もすることができた。 これらの調査から,いくつかの点が明らかになった。まず,Maxwell電磁理論が科学者社会の中で確立されるためには,ロッジのようなマクスウェリアンの存在が不可欠であったこと,なかでもロッジはマクスウェリアンとしてのみならず,19世紀物理科学界のキ-・パーソンとでもいうべき役割を果たしていたこと,しかも科学と社会をむすぶ重要な活動を積極的に行っていたこと,Maxwell理論の確立に決定的な役割を果たしたとされる電磁波検証実験をほとんどヘルツと同レベルまで行っていたこと,ヘルツ実験を高く評価し,その実験が示す本当の意義を科学界に積極的に伝えたことなどである。また,付随的なことながら,長岡半太郎の土星型原子モデルはロッジの講演からヒントを得たものであったが,その原論文を特定し,当時のロッジの原子モデルに関する考えを明らかにすることもできた。
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