1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08680085
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
中村 民雄 福島大学, 教育学部, 助教授 (60143129)
|
Keywords | 竹刀打ち剣術 / 打ち込み稽古 / 他流試合 / 防具 / 直心影流 |
Research Abstract |
1700年代から1800年代にかけて関東地方に勃興した剣術新流派は、それまでの形打ちを中心とする剣術流派に代わって防具を着用し竹刀で打突しあう竹刀打ち剣術を生み出し、打ち込み稽古法という新しい稽古法を出現させた。そして、この竹刀打ち剣術は、他流試合を可能にし、流派の壁を越えて在来の剣術を競技化・スポーツ化させていった。 しかしながら、一口に在来の剣術の競技化・スポーツ化といっても、例えば、いつ誰れが、どのような理由で防具を使いはじめたのか。防具を用いることにより、それまでの形打ちの技術はどのように変化し、技の体系はどのように変わっていったのか。また、いつどの流派が他流試合をはじめたのか。その時の約束事(ルール)は如何なる内容のものであったのか等、実証的に明らかにしなければならない問題は山積されている。 そこでまず、流派の枠をこえて近代的な剣道ができ上がってくる以前、明治20年代までの剣術流派の勢力分布を探り、しかも、いち早く防具を着用し、竹刀打ち込み稽古を始めた直心影流が江戸で勢力を拡大し、各地へ広まった流派であったことから、江戸を中心とした関東をまず視野においた。そして、より早くに竹刀打ち剣術を採用した流派は、それだけ教線拡張にのりだすのも早く、より広い地域に広がっていたであろうという仮説を立て、どの流派が有力流派として明治20年代まで勢力を保持・拡大していたのかを明らかにし、その伝播形態をみるための作業仮説(序章)を提示することから始めることとした。 その結果、直心影流や神道無念流のように関東一円のみならず全国各地へも広がっていった流派と、関東の一地域にしか広まらなかった地域性の強い念流・霞新流などがあり、それら個々の流派の伝播形態を実証することが次ぎなる課題としてもち上がってきた。
|