1997 Fiscal Year Annual Research Report
前頭連合野の作業記憶過程におけるノルアドレナリン受容体の役割
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08680889
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
澤口 俊之 北海道大学, 文学部, 助教授 (00183830)
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Keywords | ノルアドレナリン / α2受容体 / ワーキングメモリ / イオントフォレシス / 前頭連合野 / サッケード / 遅延反応 / サル |
Research Abstract |
本研究の目的は、前頭連合野の作業記憶過程におけるノルアドレナリン受容体(α1、α2、β)の役割を明らかにすることにある。この目的のため、今年度は「イオントフォレシス法」による実験を展開した。まず、サルに眼球運動による遅延反応(oculomotor delayed-response、ODR)を訓練した。この課題では、サルは数秒の遅延期の前に提示された視覚刺激の位置に記憶誘導サッケードをすることが課される。この課題を正しく行なうめにはターゲットの位置を遅延の間に覚える必要があり、空間情報の作業記憶が必須である。サルがこの課題を行なっている際に、多連微小炭素線維封入ガラス電極を用いて前頭連合野からニューロン活動を記録した。そして、各種ノルアドレナリン受容体阻害剤をイオントフォレティックに投与し(通常50nAの電流量)、ニューロン活動に対する効果を解析した。その結果、 1)α1受容体の阻害剤、prazosinやβ受容体の阻害剤、propranlolのイオントフォレティック投与は、ODR課題に関連するニューロン活動に有意な影響を持たないこと。 2)α2受容体の阻害剤yohimbineのイオントフォレティックな投与によって、ODRに関連するニューロン活動、とくに遅延期に増加するニューロン活動が減弱すること。 3)Yohimbineの減弱効果は、自発(背景)活動よりも遅延期の活動でより強いこと。 4)Yohimbine投与中に、遅延期に関連するニューロン活動の方向選択性の程度が、好みの方向を維持したまま減弱すること。 などの諸点が明らかになった。 これらのデータは、前頭連合野におけるα2受容体の賦活が、作業記憶のニューロン活動に調節的な役割(modulatory roleをもつことを示唆する。つまり、ノルアドレナリン受容体、α1、α2およびβ受容体の中で、α2受容体の賦活が前頭連合野の作業記憶のニューロン過程に重要であり、とくに、作業記憶過程の中でも「記憶保持(情報バッファ)」を担うニューロン過程に深く関与すると考えられる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Sawaguchi,T.: "Attenuation of delay-period activity of prefrontal cortical neurons by an a2-adrenergic antagonist during an oculomotor delayed-response task in monkeys." Journal of Neurophysiology. (Accepted). (1997)
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[Publications] Hasegawa,R., Sewaguchi,T. and Kubota,K: "Monkey prefrontal neuronal activity coding the forthcoming saccade in an oculomotor delayed matching-to-sample task." Journal of Neurophysiology. 79. 322-333 (1998)
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[Publications] Sawaguchi,T.: "Attenuation of preparatory activity for reaching movements by a D1-dopamine antagonist in the monkey premotor cortex." Journal of Neurophysiology. 78. 1769-1774 (1997)
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[Publications] Sawaguchi,T. and Kikuchi,Y: "Involvement of α2-adrenergic receptors in visuospatial working memory:local injection of noradrenegic antagonists in the monkey prefrontal cortex." Society for Neuroscience Abstract. 23. 185.18 (1997)
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[Publications] Fukushi,T. and Sewaguchi,T.: "Progressive processing of force-related parameters in the dorsal premotor and motor cortices of the monkey." Society for Neuroscience Abstract. 23. 606.14 (1997)
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[Publications] Sewaguchi,T. and Yamane,I.: "Dynamic change in the spatial coding of prefrontal cortical neurons in monkeys with a change in behavioral context." Neuroscience Research Supplement. 21. 251 (1997)
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[Publications] 澤口俊之: "「私」は脳のどこにいるのか" 筑摩書房, 216 (1997)
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[Publications] 澤口俊之: "知性の脳構造" 大日本印刷, 34 (1997)