1996 Fiscal Year Annual Research Report
ジェンダーの視点にもとづく現代日本農村におけるイエ継承意識の研究
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08710216
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Research Institution | Shibusawa Foundation for Ethnological Studies |
Principal Investigator |
高橋 由紀 財団法人民族学振興会, 研究員 (50280649)
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Keywords | ジェンダー / 女性 / 日本 / 農村 / イエ / あとつぎ / 意識 / ライフヒストリー |
Research Abstract |
山形県朝日町を事例とし、男性跡継ぎと女性跡継ぎのイエ継承意識を比較考察しながら、農村社会におけるジェンダー関係とその構造を探るという目的にそい、男性19人と女性19人から、ライフヒストリーの聞き取り調査を行った。また、僧侶・保健婦などにもインタビューした。結果は、 (1)男女の跡継ぎともに、成育の過程でイエを継ぐという規範を受け入れ、町に定着している。 (2)戦前生まれの跡継ぎにとって、イエを継ぐことは家業の継承を意味していたが、戦後生まれの農家の後継者は家業継承を断念し、親の扶養・家産や祖先の維持のためにイエを継いだと考えている。 (3)女性跡継ぎは婿をとり、婿がイエの代表権を担い家産の管理を行っている。しかし、女性跡継ぎも、親戚付き合いなどに役割を果たし、家産の名義を共有し、イエを存続させる役割を担っている。 (4)「跡継ぎは長男が望ましい」とする価値意識は、戦前生まれ/戦後生まれ/男女に引き継がれている。しかし、それは男系重視というよりは、経済的安定性を考慮するためのようである。 (5)戦後生まれの男女の跡継ぎは、自分の子どもには跡継ぎを期待できないと考えている。 以上の結果から、個人の意識の中ではイエ継承に関するジェンダー差はみられないが、男性がイエの代表権や経済を担っていることから、地域社会の中では女性跡継ぎの存在意義が顕在化しにくいこと、及びイエ意識が徐々に変化していることがわかった。ライフヒストリー手法によって話者の内面や成育環境を理解することで、個人が社会構造をどのように把握しているのかを知り、女性跡継ぎの役割を明らかにすることができた。
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