1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08720005
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
重松 博之 北九州大学, 法学部, 助教授 (50243879)
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Keywords | 承認 / 合意 / ヘーゲル |
Research Abstract |
ロールズやハ-バーマスなど、現代正義論の主たる論者には、法と制度の正しさの根拠を「合意」に求め、規範の問題をカント哲学の再構成として、義務論的、形式主義的、普遍主義的、手続論的に考える傾向がみられる。そのような「合意」論的正義論のアプローチと、ヘーゲルのイェーナ後期承認論に準拠した「承認」論的主義論のアプローチを対質させることによって、対話的合理性基準の質を原理的に問い直すことを、本研究は目的とした。 そのために、ヘーゲル承認論から出発しつつも、カント的な「合意」論的アプローチを採るに至るハ-バーマスの討議倫理学と、「承認」論的アプローチを採る現代承認論が、異なった理論展開をみる必然性を、まずは考察した。そのうえで、ヘーゲルの承認闘争論を理論的源泉としつつ、権力論を取り入れたコミュニケーション論を提起することによってハ-バーマス批判を行う、A.ホネットらの現代承認論の理論的射程を検討した。それにより、「道徳性と人倫」をめぐるカント・ヘーゲル問題が、現代正義論における「普遍主義と文脈主義」問題、「リベラリズムと共同体主義」問題と並行関係にあり、今なお理論的有効性を持つことが浮き彫りにされた。 このような作業を通して、本研究は、原理的には、この「承認」論的アプローチの側に、新たな社会理論および法理論の可能性を見い出し、「合意」論的アプローチに対する、その批判の意義と射程を明らかにした。と同時に、両アプローチの事実上の融合傾向についても確認した。
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Research Products
(1 results)