1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08740209
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
松崎 昌之 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (90212216)
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Keywords | 有限系 / 中間子 / 回転運動 / 相対論的多体論 / クランキング模型 / 平均場理論 |
Research Abstract |
原子核が本質的に相対論的多体系であるのか、あるいは非相対論的近似で十分なのかはいまだに明らかでない。このことは原子核理論の最も基本的な課題である結合エネルギーの飽和性の機構の理解の仕方の違いに始まり核物理の種々の場面に現れるが、典型的な集団運動の一つである回転運動では、(核子密度に比例した平均場を持つ)中間子場がどれだけの集団的角運動量を担うのかという問題になる。そこで、核子・中間子多体系の場の理論の枠組みで取り扱う量子ハドロン力学を用いて、1)中間子場を平均場近似で扱って、2)中間子場を量子化して、の二段階に分けて、高速回転核の角運動量の内訳を調べる事を目的とした研究計画を設定した。 1)の平均場近似段階については、すでに完成していたシグマ・オメガ模型の数値計算プログラムにクーロン力及びロ-中間子を入れることによって、陽子数と中性子数が異なる現実の原子核を扱える道具立てを準備した上で、異方性を持ちかつ回転によって時間反転対称性が優れた中間子場の集団角運動量の期待値を計算した。その結果、中間子場が直接担う角運動量自体は小さいが、時間反転対称性の破れによって現れる中間子平均場の空間成分がベクトル・ポテンシャルとしての核子の波動関数に作用した結果、原子核の慣性能率が2割程度増加することが明らかになった。2)の量子化段階については計画を実行するに至らなかったが、Ringらによって提唱された特殊相対論に基く理論形式に不備があることを明らかにし、一般相対論に基いて正しい理論形式を提案した。 以上の成果について間所(九大)と共著で日本物理学会で2度発表を行ない、論文をPhysical Review Letters誌に投稿した。また、関連する実験データの分析を行ない、Gervais(McMaster大)らと共著の論文をNuclear Physics誌に投稿した。
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