1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08740272
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池本 弘之 富山大学, 理学部, 助手 (20262496)
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Keywords | 液体 / カルコゲン / ホール係数 / 磁気抵抗 / 金属-半導体転移 / セレン / テルル |
Research Abstract |
液体セレン-テルル系は、温度、圧力、組成比を変えることによって金属-半導体転移を起こす。すなわち、低温、低圧、セレンリッチ側では半導体であるが、高温、高圧、テルルリッチ側では金属である。したがって、液体カルコゲンのホール係数を広い温度・圧力領域で測定することにより、金属-半導体転移に伴う伝導機構の変化を捉えることができる。そのために、磁場空間の大きいヘルムホルツ型電磁石を用い、2交流法によるホール係数測定システムを整備した。 我々の2交流法システムの基本構成装置は、2台のファンクションジェネレータと、デジタルロックインアンプである。液体テルルのホール電圧は、400ガウスの磁場、0.3Aの試料電流では数ナノボルトにすぎない。我々は、磁場の周波数を0.5Hz、試料電流の周波数を1000Hzにし、その差周波または和周波の数ナノボルトのホール電圧を検出できるようになった。その結果、既に報告されているように、液体テルルのホール係数は融点近傍から過冷却に伴って急激に大きくなることを確かめた。現在は、液体テルルの金属-半導体転移に伴うホール係数の変化を捉えるために、過冷却温度領域を広げるべくセルや電気炉などの改良を行っている。 ホール係数と同じ磁場下での物理量である磁気抵抗の測定も同時に進めている。我々は、液体テルルが正符号の磁気抵抗を示すことを明らかにした。磁気抵抗の存在は、テルルの金属性が自由電子モデルのような単純な機構によらないことを示唆する。電気伝導度が小さくなるにつれて、磁気抵抗の大きさは小さくなる。得られたデータ外挿すると、最小金属伝導度を示す温度付近で、磁気抵抗はゼロになる。このことは、金属領域と半導体領域では伝導機構が異なることを示唆する。
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