1996 Fiscal Year Annual Research Report
酸化活性ルテニウム-オキソ錯体の合成及び反応性と分子認識遷移金属錯体触媒の合成
Project/Area Number |
08740523
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小島 隆彦 九州大学, 理学部, 助手 (20264012)
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Keywords | ルテニウム錯体 / トリス(2-ピリジルメチル)アミン / アルカン酸素化反応 / アルカン塩素化反応 / 高原子価ルテニウム錯体 / 分子認識金属錯体 |
Research Abstract |
三脚型配位子であるTPA(TPA=トリス(2-ピリジルメチル)アミン)を有するルテニウム(II)錯体を用いたアルカンの触媒的酸化反応において、新たな知見を得ることができた。すなわち、複核錯体[RuCl(TPA)_2](ClO_4)_2(1)と新たに単核錯体[RuCl(TPA)(DMSO)]ClO_4(2)を合成しその反応挙動を比較検討した。錯体2は錯体1の半分の構造を有している。この2つの錯体はm-クロロ過安息香酸を共酸化剤としたアダマンタンの酸化反応において、塩素化及び酸素化における3級/2級C-H結合に対する選択性が共に良い一致を示すことから、錯体1はアルカン酸化反応において単核中間体に誘導され、錯体2と同じ酸化活性種を生成することが明らかとなった。また塩素化と酸素化でその選択性が異なることから、それぞれの反応の活性種は異なることが示された。また、t-ブチルヒドロペルオキシドを共酸化剤として用いる場合、アルカン酸化反応はラジカル連鎖反応で進行し、錯体の反応性はその酸化還元電位に依存することが明らかとなった。これらの結果については現在論文投稿中である。一方、ルテニウム(III)単核錯体である[RuCl_2(TPA)]ClO_4(3)を水溶液中でAgNO_3で処理した後、Ce(IV)と反応させると緑色溶液が紫色溶液となり、徐々に元の緑色溶液に戻ることが観測された。その紫色溶液中で準安定な高原子価状態の錯体を形成していると考えられるが、現在その単離同定は成功しておらず、低温での合成など今後さらに検討を進める。 分子認識金属錯体を指向した配位子の合成に関しては、TPAの2つのピリジン環上に1-ナフトイル基を有する配位子の合成を遂行し、現在その最終段階の条件設定を行っており、近日中にはその合成を完了する予定である。
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