1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08750401
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳沢 淳一 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (60239803)
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Keywords | メゾスコピック系 / 量子細線 / 2次元電子系 / 磁気抵抗 / 電圧プローブ |
Research Abstract |
GaAs/AlGaAs変調ドープ構造に形成された高移動度を持つ2次元電子ガス層に高エネルギーGa集束イオンビーム直接描画により、幅5μm、長さ120μmの細線構造を作製した。この細線の途中に電圧測定のためのプローブを間隔15μmで、プローブ幅は2または5μmの2種類のものを形成したが、前者は基板の電子の平均自由行程とほぼ同程度、後者はそれよりも広くとってある。4端子法によりこれら15μmの長さの細線の電気抵抗の垂直磁場依存性を測定した。磁場をかけていくことにより電気抵抗は零磁場での値から減少していくが、これはシュブニコフ・ドハース振動が観測されるまで続いた。つまり、磁場によるサイクロトロン運動によって電子が細線の壁に沿って運動するようになると、細線による閉じ込めの効果がなくなり2次元の系と同等になるが、そうなると細線にしたことによる有限の幅のため抵抗が高かったものが、磁場により幅の効果がなくなって抵抗が低い状態へと移行する過程が見られたものと考えられる。さらに試料に光を当てて電子密度を多くすると、零磁場のごく近傍に弱局在効果による正の磁気抵抗が見られるようになるが、このあたりの状況にプローブ幅の違いによる差は見られなかった。しかし、磁場により抵抗が下がっていく過程において、ごく弱いが幅の広いピークが重畳されており、その現れかたはプローブ幅により異なることが観測された。このピークの原因についてはまだ明らかにされていないが、磁場をかけることにより1次元から2次元へと系が移り変わるのに伴い、電圧プローブへの電子の入りかたに何らかの規則性があることは予想されたが、本年度の結果だけではこの現象の説明に必要な実験事実がまだ足りないため、今後細線幅やプローブ間隔依存性など、基本的な実験をさらに続けて行っていく必要があると思われる。
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