1996 Fiscal Year Annual Research Report
森林樹木による降水質変化過程の解析とその数理モデル化に関する研究
Project/Area Number |
08750631
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 弘 徳島大学, 工学部, 助手 (10210717)
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Keywords | 森林水文 / 水質水文 / 降雨遮断 / 降雨水質 / 樹冠通過雨 / 樹幹流 / lcaching / 酸性雨緩和 |
Research Abstract |
森林樹木による降雨水質調節機構の把握を目的に、徳島大学常三島キャンパス内のクスノキを対象とした屋外降雨水質観測実験と今回作成した簡易降雨シミュレータによる屋内降雨遮断実験を行い、降雨遮断過程における雨水水質の変化過程とその過程におけるリーチング量の数理モデルによる定量評価を試みた。 まず降雨水質観測実験では林外雨、樹幹通過雨および樹幹流の経時変化を転倒マス式雨量計で観測すると共に雨水資料を最短5分間隔で採取して水質分析に供した。このときの林外雨のpHはその結果、樹幹通過雨および樹幹流で林外雨よりもpHが増加することが明らかになった。特にこの傾向は樹幹流で顕著であり最大で2.5以上の上昇が観測された。これは水質分析の結果からカリウムおよびナトリウムの陽イオンが樹体よりリーチングされたためと考えられた。既開発の降雨遮断タンクモデルに改良を加えた降雨水質タンクモデルを構築し観測結果へ適用したところ、各降雨成分のイオン濃度の経時変化を良好に再現できた。 詳細な水質変化過程の評価のために縦1.7m×横1.7mの底面積を持つ簡易降雨シミュレータを作成した。林外雨にイオン交換水を利用して12mm/hrから20mm/hrの一定降雨強度で降雨遮断実験を実施し、各降雨成分の強度とイオン濃度変化を観測した。実験においてはリーチング量の把握を目標に実験直前に樹木を充分に洗浄してから実験を行った。その結果、樹幹通過雨ではほとんどpHの上昇は見られなかったが、樹幹流ではおよそ0.5程度の上昇が観測された。このときに林外雨水質と樹幹流水質を比較すると明らかにカリウムイオン濃度とナトリウムイオン濃度が上昇すること、濃度差は時間と共に減少することが観測された。このことよりリーチング量は時間的とともに減少することが示された。降雨水質タンクモデルのリーチング項を修正して実験結果に適用したところ、濃度変化を良好に再現できた。
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[Publications] T.Tamura,H.Yoshida & M.Hashino: "Seasonal change of streamwater and soilwater chemistries in forested mountain basins concened with soil moisture and temperature" Proc.of Intenational Conference on Water Resources and Environmental Research. Vol.2. 239-246 (1996)
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[Publications] 廣本勝昭、吉田弘、端野道夫: "数理モデルによるリーチング評価の試み" 土木学会年次学術講演会講演概要集. 第7部. 288-289 (1996)