1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08750721
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 ゆかり 東京大学, 工学系研究科, 助手
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Keywords | 療養環境 / アジア的医療 / 分娩 / 医療施設 / 病院 / 癒しの環境 / 在宅分娩 / 産む側の主体性 |
Research Abstract |
人口の都市への集中化・核家族化が進む中で、日本人の生活環境は劇的な変化を遂げてきた。これまで医療の現場は自宅が主流であったものが、診療所・病院等の施設主導型になり、フォーマルセクターでの医療が当然のこととなった。 本研究では明治維新以来西欧文化の影響を受けてきた医療施設の今後のあり方を模索すべく、過去の事例および周辺のアジア諸国で行われている医療とその療養環境を分析し,アジア的視点から見た日本の医療施設評価を行った。 本研究では戦後も引き続き離島などで多く見られた自宅での分娩例を文献から挙げ、医療施設と在宅との相違を検討した。在宅分娩の減少は医療ニーズの変化と共に分娩まわりの環境をハイテク化させ、周産期死亡率の減少に貢献したものの、「産む側の主体性」を低め、積極的に周囲の療養環境を自らの手で構築してゆく手だてを取り去った。伝統、家族との関わりなど、これまで療養環境に見られた従来型のものが希薄になり、地域性が薄れたことが特徴である。 在日アジア系外国人の入院体験者インタビューから、彼らが療養中困難としたものは付き添いの制限、食事の選択のなさ等、直接的に医療に関わる問題ではなく、多分に文化的なものであった。これらの項目は「癒しの環境」を考慮した際に、国籍を問わず優先度の高いものであり、療養環境の改善は家族的・家庭的なものの介在の余地が指摘された。 本研究により、アジア的家族観の再検討が療養環境の改善につながるものであることが判明した。
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