1996 Fiscal Year Annual Research Report
結合原子価論と格子エネルギー計算による鉛含有ペロブスカイト誘電体の安定化機構の解明
Project/Area Number |
08750780
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
脇谷 尚樹 東京工業大学, 工学部, 助手 (40251623)
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Keywords | 結合原子価論 / 格子エネルギー / ペロブスカイト / パイロクロア / 相安定性 / マグネシウムニオブ酸鉛 / 亜鉛ニオブ酸鉛 |
Research Abstract |
鉛を含むペロブスカイト誘電体、特に代表的な緩和型誘電体であるマグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O_3、以下PMN)と亜鉛ニオブ酸鉛(Pb(Zn1/3Nb2/3)O_3、以下PZN)などは非常に高い誘電率を持ち、誘電率の温度変化が小さいため、超小型のセラミックスコンデンサー材料として実際に利用されている.しかしながらPMNの合成時には誘電特性を低下させるパイロクロア型複酸化物が共存しやすく、PZNの場合には添加物を加えないとペロブスカイト型複酸化物が安定化されずに生成しない.本研究ではこのような鉛を含むペロブスカイト型複酸化物の安定化機構を結合原子価論を用いた計算と格子エネルギー計算によって解明することを行った. その結果、PMNについては格子エネルギーの観点からはペロブスカイトとパイロクロアではパイロクロアの方が若干エネルギー的に安定であるが、その差は小さいこと、結合価数の観点からはペロブスカイトよりもパイロクロアの方が陽イオンと酸素イオンとの結合力がより強固であることがわかった.これらのことから、PMNの合成中にパイロクロア型複酸化物は消滅しにくいことが明らかにされた.PZNについては結合原子価論に基づく計算から、陽イオンと酸素イオンとの結合力は鉛を含むペロブスカイト型複酸化物の中で最小であることがわかった.また、PZNのペロブスカイト型複酸化物を安定化させるのに必要な各種の添加元素の量は結合原子価計算に基づき定量的に算出できることが明らかになった. 本研究で用いた手法は鉛を含まない一般のペロブスカイト型複酸化物に対しても適用することができる.したがって、今後新たな複合ペロブスカイト型複酸化物探索の指針を与え得るものであると考えられる.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Naoki Wakiya,Kazuo Shinozaki,Nobuyasu Mizutani: "Crystal Chemistry of Lead Containing Pyrochlore and Perovskite Type Compounds" Proc.Pac Rim2. (印刷中). (1997)
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[Publications] 脇谷尚樹・水谷惟恭: "セラミックス誘電体の最近の研究" セラミックス. 31. 241-244 (1996)