1996 Fiscal Year Annual Research Report
中国における経済改革、農村工業化と農業生産の変化に関する研究
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08760217
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
沈 金虎 南九州大学, 演芸学部, 助教授 (70258664)
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Keywords | 中国経済 / 経済改革 / 郷鎮企業 / 農業成長 / 生産関数 / 成長の会計分析 |
Research Abstract |
1978年以降、中国農業は一時目覚ましい発展を見せていたが、80年代後半以降伸び率が鈍化し、特に食糧に代表される耕種農業は低迷し始めた。その成長と波動のメカニズムを解明するため、本研究では農村工業が最も発達し、しかも発展段階に関して多様な地域性を有する江蘇省を事例に、蘇南、蘇中、蘇北3つの地域に分け、1979〜95年間の市・県データを用いて農業生産関数を計測した。その結果を利用して、各々地域における農業成長の要因を分析しながら、地域比較することによって、農村工業化の農業生産への影響について検討してみた。以下のことが明らかにされた。 (1)まず農業生産の成長率は、時期的に80年代前半までが速く、後半以降は大幅に低下した。空間的にも蘇南より蘇北地域の方がより速かった。 (2)前者80年代後半以降成長率の低下について、化肥等要素投入増の減速による寄与減少にも一部原因あるが、根本的には生産責任制の普及完了による効率改善効果の消失と、交易条件の悪化、強力なライバル産業の出現などによる農業生産効率の悪化に原因がある。 (3)後者成長率の空間的な格差について、一つの原因は要素投入とその寄与の差にある。特に80年代前半まで、農村工業が発達した蘇南では、土地と労働投入が大幅に減少し、化肥投入も小幅増に対して、そうでない蘇北では労働力は増加、作付面積も微減、化肥投入は大幅に増加したため、農業成長に対する要素投入の寄与は蘇北でより大きかった。二つ目の原因は、要素投入で説明できなかった残差項にある。その残差項の寄与が正の時期(80年代前半まで)は蘇北で大だが、負の時期(80年代後半以降)は蘇南でより大きかったのである。 従って、今度農村工業化を追求し続けるならば、その負の影響を充分考慮した上で、農業政策などを展開しなければならないと思う。
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