1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08770270
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
玉腰 暁子 名古屋大学, 医学部, 講師 (90236737)
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Keywords | 血清総コレステロール / 中性脂肪 / 自殺 / 事故 / 前向き疫学調査 / 職域集団 |
Research Abstract |
[対象と方法]1990年に某自治体で全職員を対象に実施した健診受信者18,710名中、40歳以上54歳以下の8,367名(男5,616名、女2,751名)を対象として血清脂質レベルと自殺との関連につき前向き検討を行った。血清脂質(総コレステロールと中性脂肪)はその分布にしたがい、構成員を四分割または十分割し、血清脂質レベルと自殺・事故との関連をCoxの比例ハザードモデルを用いて性・年齢・喫煙状態・飲酒状態・精神的な訴えの状況(不安の有無、憂うつの有無)で調製し検討した。観察は1996年3月31日まで実施し、退職者は退職時点で打ち切り例として扱った。死亡者については、死因・死亡年月日などを把握した。 [結果と考察]96年3月31日までの約6年間に観察対象者から384例の退職、73例の死亡(うち自殺10例、事故5例)が発生した。総コレステロール:第一四分位から3例の自殺者、5例の自殺・事故死亡者が観察されたが、他の群にくらべ若干ハザード比が高いものの有意ではない。さらに、総コレステロール値の分布に従い十分割して検討したところ、最も低い群(157mg/dl未満)では2例の自殺者、3例の自殺・事故死亡者が認められ、他群を1としたときのハザード比はそれぞれ2.66、2.51と高いが有意ではない。中性脂肪:第一〜第四四分位からそれぞれ2、2、4、2例の自殺者、2、4、4、5例の自殺・事故死亡者が観察された。中性脂肪値が高い群ほどリスク値が増加するが、その増加は有意ではない。十分割して観察しても特に傾向は認めない。HDLコレステロール値は1,997名でのみ測定しており、自殺者は2名のみの観察であったため、今回の検討からは除外した。 外国では、低コレステロール血症のものはそれ以外のものにくらべ自殺発生率が高いとの報告が数件ある。今回の検討では、総コレストロール低値群で自殺のリスクが高かったものの有意ではなかった。しかし、観察数が少ないことの影響も考えられ、日本では低コレステロール血症と自殺との間に関連がないと結論するのは早計であろう。自殺は有効な対策を立てることにより予防可能であり、今後、当該集団でのさらなる追跡観察に加え、別集団での観察などハイリスク者を同定する努力を続ける必要があると考える。
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