1996 Fiscal Year Annual Research Report
トロンボスポンジンの血管内皮細胞におけるPAI-1産生増加作用の検討 HVJ-Liposome遺伝子導入法を用いて
Project/Area Number |
08770535
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
村石 昭彦 久留米大学, 医学部, 助手 (60229945)
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Keywords | トロンボスポンジン / TGF-β / PAI-1 / 内皮細胞 |
Research Abstract |
TSPは血小板より放出される多機能糖蛋白質で、血栓形成や動脈硬化の進展に接着因子、増殖因子として重要な役目を果たす。我々は今までTSPのPAI-1産生増加作用をA549細胞を用いて外因性のTSP投与で内因性のTGF-β1の産生が増加し、引き続きPAI-1の産生を増加させることで、癌転移を助長する方向で作用する可能性を示した。 血管内皮細胞でもPAI-1,TSPが発現し、同様のメカニズムの存在が疑われ、科研費補助を得てその機序を研究してきた。血栓周囲で活性化された血小板や内皮細胞、さらには傷害された平滑筋細胞から放出されたTSPが、(TGF-β1の作用を介して)PAI-1の産生を増加させるとすれば、血栓溶解を妨げ、TSPがもつ他の作用と併せ、虚血性心臓病、動脈硬化の進展に重大な影響を及ぼすことになる。これまでの研究で、ラット心筋内の内皮細胞では、免疫組織化学的検討で他臓器の内皮細胞よりも高度のTSPが発現している所見を得ている。TSPの作用には内因性のTGF-β1の役割が重要であるという仮説を検証するため、in vitroの系で、精製したTSPを血管内皮細胞に投与後、TGF-β1,PAI-1の産生を蛋白レベル、mRNAレベルで検討している。今までにTGF-β1単独投与でもPAI-1レベルは上昇するという結果を得始めており、TSP抗体の投与によりTGF-β1,PAI-1の上昇は抑えられる等の本年度の作業仮説を証明する結果を得始めている。完全長のTSPcDNAをHVJベクターを利用して血管内皮細胞に同じくin vitro遺伝子導入して内因性のTSPの作用、特にTGF-β,PAI-1との関連性と循環器疾患における意義を検討することを進めているがまだ良好な結果を得ていない。
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