1996 Fiscal Year Annual Research Report
紫外線照射ヒト皮膚の加齢による細胞周期、及び日光角化症のp53の突然変異の検討
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08770664
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鵜殿 雅子 長崎大学, 医学部附属病院, 助手 (80244044)
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Keywords | Aging / 日光角化症 / SCC / チミンダイマー / p53 / PCNA |
Research Abstract |
健常若年者及び高齢者に4MED(最小紅斑量)のUVBを照射し、経時的に皮膚生検を施行。各切片にチミンダイマー(T-dimer)染色、PCNA、p53の二重染色を行った。若年者では、照射直後より検出されたT-dimerは4日で表皮より消失した。p53は4時間後より陽性となり、3〜4日後に消失。PCNAは2日後より表皮の下層で陽性となり4日後まで続いた。高齢者ではT-dimerは7〜14日後に消失し、p53、PCNAの推移もそれに伴い経過が遷延していた。色素性乾皮症では照射前よりT-dimer、PCNA、p53全て弱陽性で、UVB照射に対する反応は、高齢者のそれより更に遅延していた。いずれの群もp53とPCNAのdouble positive cellは認められなかった。 日光角化症(AK)、SCC各10例では、T-dimer陽性例は各5例、PCNA及びp53は全例で陽性だった。全細胞数の30〜40%がp53陽性、p53陽性細胞の約30%がPCNA陽性であった。PCNA単独陽性細胞はなかった。全例に変異型p53の免疫染色を行ったが陰性。PCR-SSCPでは、AK、SCCの各1例にExon5のバンドシフトが見られたため、現在シークエンスを行っている。 加齢によりT-dimerの修復には長時間を要することが明らかになった。p53はDNA修復のため誘導され、PCNAは表皮再生のため誘導されたと考えた。色素性乾皮症は、加齢の極端な場合といえるかもしれない。皮膚癌でPCNA、p53という相反する作用を持つ2種類の蛋白が同時に検出されたことは興味深い。p53がmutantであるためG1-arrestを起こせず、従って細胞増殖に抑制がかからず、PCNA陽性であるという解釈が成立する。しかしmutant-p53染色が陰性で、PCR-SSCPでも10%のmutationしか見つからないことより、p53の特性を更に検討する必要があると考えた。
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