1996 Fiscal Year Annual Research Report
抗うつ薬の慢性投与によるラット脳内各種蛋白リン酸化酵素活性に及ぼす影響
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08770796
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
大地 武 昭和大学, 医学部, 助手 (70255777)
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Keywords | プロテインキナーゼA / プロテインキナーゼC / Ca^<2+> / カルモジュリン依存性キナーゼ / 抗うつ薬 / SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬) / ラット |
Research Abstract |
現在のところ抗うつ薬の作用機序は明らかではないが、一方で抗うつ薬が受容体以降の細胞伝達系に影響を及ぼし機能蛋白のリン酸化レベルを調節している可能性を示す知見が増えつつあり、従来の受容体仮説とは異なった新たな抗うつ薬の作用機転として注目されている。そこで本研究では抗うつ薬の慢性投与が脳内蛋白リン酸化酵素活性に影響を与え神経機能の変化を生じている可能性を検討する目的で、三環系抗うつ薬(imipramine)とSSRI(sertraline)の慢性投与がラット脳内プロテインキナーゼA(PKA),プロテインキナーゼC(PKC)、Ca^<2+>/カルモジュリン依存性キナーゼ(CAMKII)活性に及ぼす影響を検討した。SD系雄性ラットを3群に分け、control群には溶媒を、imipramine(IMI)群、sertraline(SER)群には各薬物を10mg/kg、1日2回、3週間腹腔内投与し、大脳前頭皮質、海馬を蛋白分解酵素阻害薬、蛋白リン酸化酵素阻害薬を含む緩衝液中でホモジネートし、遠心分離後、上清をsoluble fraction、沈渣をparticulate fractionとしPKA活性をキット(Pierce)にて測定した。その結果PKA活性は、前頭皮質においてcontrol群に比しIMI群108%,SER群112%と共に有意な上昇を認め(p<0.05)たが、海馬では有意差はみられなかった・さらにPKA活性にて変化のみられた前頭皮質にてPKC活性(医学生物研究所のキットを用いた).CAMKII活性([^<32>P]ATP及びsyntide-2を基質として用いCa^<2+>依存性、Ca^<2+>非依存性活性に分け検討)を測定したがいずれの活性においてもcontrol群に比し有意な変化は認められなかった。以上より、imipramine,sertralineの慢性投与はラット前頭皮質にてPKA活性を共に上昇させており、抗うつ作用に関与している可能性が示唆された。
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