1996 Fiscal Year Annual Research Report
無アルブミンラットの創傷治療及び蛋白代謝に関する検討
Project/Area Number |
08770931
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
小林 伸久 自治医科大学, 医学部, 助手 (10245045)
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Keywords | 無アルブミンラット / 低アルブミン血症 / 創傷治癒 / 蛋白代謝 |
Research Abstract |
【目的】無アルブミンラット(NAR)はSDラット(SDR)のミュータント系であり、遺伝的に肝におけるアルブミンの生合成が欠損しており、血清総蛋白量は正常だがアルブミン量が5mg/dl以下と極めて少ない。臨床的に低アルブミン血症では創傷治癒が不良であるといわれるが、今回我々はTPN施行下において、NARとSDRの創傷治癒と、蛋白代謝について比較検討した。 【方法】250g前後の雄性NARとSDRを用い、代謝ケージ内でTPNを施行した。投与総エネルギーは270kcal/kg/dayとした。TPN開始後4日目に背部に6cmの皮切を置き、皮下にポリビニールアルコール・スポンジを2本並列に留置した。創作製後4日目及び8日目に犠死させる群をNARとSDRにそれぞれ設けた。なお犠死前に、TPNに混注した15Nグリシンの定速注入を行い、全身蛋白代謝回転と、組織における蛋白合成速度を測定した。【結果と考察】体重増加率、累積窒素平衡は、経過中SDRの方が高かった。3-メチルヒスチジン排泄量はいずれの日でもNARの方が有意に高値を示した。これらより、NARはSDRに比べ筋蛋白の分解が亢進していると考えられる。血中尿素窒素が、術前は差がなかったが術後8日目においてはNARの方が高かったことも、蛋白分解の亢進を示唆すると思われる。全身蛋白代謝回転速度(Q)、蛋白分解速度(B)は、両ラット間にほぼ差はなかったが、蛋白合成速度(S)、内因性蛋白合成効率(S/Q)は、SDRの方が高かった。この結果より、NARではアミノ酸からの蛋白合成への効率も低下していると考えられる。一方、臓器蛋白合成速度(FSR)は、肝、骨格筋、創部皮膚とも、両ラット間に差はなかった。一方、創傷治癒に関しては、創の抗張力、創部皮膚hydroxyproline量、皮下スポンジ内hydroxyproline量、および、スポンジ内蛋白画分中の15Nの存在率は、いずれもNARはSDRと差がなかった。この結果より、NARの創傷治癒はSDRと同様と考えられる。 【まとめ】NARはアルブミンが極めて微量にも関わらず、創傷治癒はSDRと同等でああった。また、臓器の蛋白合成速度も保たれていた。しかし、全身の蛋白崩壊は亢進していた。
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