1996 Fiscal Year Annual Research Report
In Situハイブリダイゼーションによる肺癌増殖因子発現の検討
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08771033
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山本 達也 帝京大学, 医学部, 助手 (30230569)
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Keywords | 肺癌 / 増殖因子 / In Situハイブリダイゼーション |
Research Abstract |
肺癌の浸潤・増殖のメカニズムの一端を解明することを目的として、増殖因子が合成される部位と作用する部位を明らかにするために、In Situハイブリダイゼーション法を利用し、肺腺癌手術症例を研究対象として、FGFとFGF-R増殖因子発現度・発現部位・病理学的因子との関係を調べた。その結果(1)切除肺癌症例のパラフォルムアルデヒド処理パラフィン包埋切片に対し、DigoxigeninラベルしたFGFとFGF-RのcDNAをプローブを用いIn Situハイブリダイゼーションを行った。FGFとFGF-RmRNAの発現は14例中6例に認められ、いずれも細胞質に発現した。(2)FGFとFGF-RのmRNA発現度をNorthern blotting法にて分析、定量化を試みたが、この方法では検出困難であり、評価に耐えうるデータは得られなかった。(3)抗FGF抗体および抗FGF-R抗体を用いた免疫組織染色によってFGFとFGF-Rの発現を検討した結果、In Situハイブリダイゼーションによって得られたmRNA発現例と高い一致を認めた。ただし、mRNA発現は見られない症例でも免疫組織学的にはFGFの存在が見られる症例もあり、他の細胞由来の増殖因子が細胞内に取り込まれ、増殖刺激につながっている可能性が示唆された。(4)FGFとFGF-RのmRNA発現度と、臨床病理学的悪性度(分化度、リンパ節転移、リンパ管侵襲、脈管侵襲等)との相関関係を検討したところ、FGFとFGF-RのmRNAはともに病期・リンパ節転移との相関が確認されたが、その他の因子とは有意な関係は見られなかった。 以上より、肺癌細胞に対するFGFの自己増殖刺激作用と悪性度への関与が示唆されたが、その作用にはFGF-Rの存在が介在し、また他の細胞由来の増殖刺激(いわゆるパラクリン作用)の可能性も示唆される結果であった。
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