1996 Fiscal Year Annual Research Report
周術期における損傷組織高分子構造変化と生体インピーダンス
Project/Area Number |
08771231
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多田羅 恒雄 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30207039)
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Keywords | インピーダンス / 体液量 / 浮腫 / 細胞膜 / 手術 |
Research Abstract |
<対象と方法> 開腹消化管手術患者30例を対象として、全身および体部分(腕・体幹・脚)に周波数5-1000kHzの微弱交流電流を負荷し、手術前後の各周波数におけるインピーダンスを測定した。この結果をもとにCole-Coleプロットを行い、外挿法により求めた周波数0での抵抗値の変化率と手術中の水分バランスから求めた細胞外液量変化率との相関を検討した。 <結果と考察> 手術前における全身および各体部分のインピーダンスの周波数特性は、細胞膜などの界面分極によるβ緩和を示し、その緩和周波数は約80-100kHzであった。手術後、全身および各体部分におけるインピーダンスの緩和周波数は、体液量の増加により約100-150kHzと増加したが、この変化は体幹において著しく、これは手術侵襲による組織の浮腫および細胞膜構造の破壊を反映していると考えられた。 全身および体部分の抵抗値は、手術中の輸液負荷による体液量増加を反映し、術後有意に低下した(P<0.0001)。また、全身抵抗の変化は四肢抵抗の変化に最も影響され、体幹抵抗変化による影響はわずかであった。一方、抵抗変化率と水分バランスにより求めた細胞外液量変化率との相関は、体幹において最も高く(r=0.82)、全身においと低かった(r=0.50)。これは、術中の細胞外液量増加が全身で一様でなく、主として体幹に生じていることを示唆している。このように全身抵抗は、体幹における体液貯留を十分に反映しないため、体液量の増加が体幹で著しい重症患者では、全身抵抗値に基づく細胞外液量の推定は、細胞外液量増加を過小評価する可能性がある。これに対し、体液の約2/3が分布する体幹の抵抗変化は、重症患者における体液量の相対変化を検出できると考えられ、体液量の有用な指標となることが示唆された。
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