1996 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺α1-adrenoceptorの加温変化における可逆性の検討
Project/Area Number |
08771288
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
小川 正至 東京医科大学, 医学部, 助手 (60256211)
|
Keywords | 前立腺肥大症 / 温熱治療 / α1-adrenoceptor / モルモット精管 / 前立腺加温治療 |
Research Abstract |
【目的】前立腺肥大症の治療の一つとしてマイクロ波を用いた温熱療法や高温度治療が臨床応用されているが、その効果発現の作用機序については未だ不明な点がある。われわれはいままでに前立腺の加温によるα1-adrenoceptorの変化についてα1-adrenoceptorが多く存在するモルモット精管を用いα1-adrenoceptor数の変化が治療効果に関与していると考えた。温熱療法の長期治療効果は短期治療効果に比べ減弱する傾向にある。それにはα1-adrenoceptorの加温後の可逆性が関与していると考えられるため加温後のα1-adrenoceptor数の変化と組織学的変化について検討する。【方法】^3[H]-prazosinを用いたradioligand binding法によりα1-adrenoceptorの定量を行いScatchard plotを用いた解析により親和恒数(Kd)と最大結合受容体数(NBS)を求めた。対象組織はモルモット精管を用い、4℃に氷冷した対照群、50、55℃の1時間加温群、加温後37℃に一定時間戻した群の3系統を作成し比較検討した。組織はトルイジンブルー・アズ-ル染色後光顕で、酢酸ウラン・鉛の二重染色後、電顕で観察した。【結果】親和恒数(Kd)は4℃の対照群に対し50℃、55℃の加温群では有意に小さくなっており37℃に一定時間戻しても元に戻らなかった。これは、加温により親和性は高い状態が維持されることを示した。最大結合受容体数(NBS)は4℃の対照群に対し50℃、55℃の加温群では有意に減少した。また、一定時間戻しても全く回復しなかった。以上より、加温によりα1-adrenoceptorの受容体数は減少しその結果は不可逆的であることがわかった。組織学的には加温群の平滑筋細胞では細胞質内フィラメントの消失、核膜や細胞膜の断裂などが顕著であった。【考察】前立腺加温治療の作用機序にはα1-adrenoceptorおよび平滑筋細胞の崩壊が関与していることが示唆された。
|