1996 Fiscal Year Annual Research Report
陣痛発来・前期破水の解明-早産におけるサイトカイン・HSPの関与について
Project/Area Number |
08771356
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
黒須 不二男 北里大学, 医学部, 助手 (30225297)
|
Keywords | 早産 / 絨毛羊膜炎 / 子宮内感染 / サイトカイン / 熱ショック蛋白 |
Research Abstract |
早産・前期破水例では羊水穿刺により得られた羊水のインターロイキン1β(IL1β),腫瘍壊死因子(TNFα),インターロイキン6(IL6),インターロイキン8(IL8)濃度は子宮収縮抑制困難例では有意に上昇しており、絨毛羊膜炎、臍帯炎の病理所見重症度に相関が認められ、子宮内感染の指標として有益であると思われた。IL1β,TNFαに拮抗する羊水中IL1レセプターアンタゴニスト(IL1ra)、可溶性TNFレセプター濃度(sTNF RI、sTNF RII)を測定すると最低でもIL1raは3,717pg/ml、sTNF R1は1,120pg/ml、sTNF RIIは2,054pg/mlと高濃度存在し、IL1、TNF濃度、子宮収縮の強弱、絨毛羊膜炎、臍帯炎の病理所見重症度の各群で有意差を認めず、羊水自体の防御因子として働いている可能性があるが、今後のレセプターの生理的作用の解明とともに検討が必要である。またサイトカイン抑制作用のあるインターロイキン10(IL10)の羊水中濃度は、破水例は未破水例に比べ高濃度の傾向にあり(198.8【.+-。】61.0 vs 77.6【.+-。】22.1,pg/ml M±SE)、破水の有無には関係なく出生時臍帯血中IgMまたはCRP高値で胎内感染が示唆された例は、非感染例に比べ有意に高濃度を示した(234.5【.+-。】49.6 vs 77.7【.+-。】24.0pg/ml M【.+-。】SE,p<0.02)。このことから羊水中(胎児)への炎症の波及によりIL10産生が誘導される可能性があり、子宮内感染のマーカーへの応用に期待される。実際の臨床では、母体の炎症マーカーを指標としており、胎児への炎症の波及を判断するのは困難である。そこで羊水中グルコースを測定し検討した。出生時臍帯血中IgMまたはCRP高値で胎児感染が疑われた例は非感染例に比べ有意にグルコース濃度が低く(15.3【.+-。】15.8 vs 39.9【.+-。】19.5,mg/dl M【.+-。】SD p<0.0001)胎児感染の指標となり得ると思われた。羊水細胞沈査からHSP70,HSP90のmRNAを検出すると、絨毛羊膜炎、臍帯炎の病理所見重症例、子宮収縮抑制困難例で強く発現しており、早産・前期破水と強く関連する事が示唆された。
|