1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08771408
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
緒方 洋一 山口大学, 医学部, 助手 (30233406)
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Keywords | 前庭有毛細胞 / 哺乳類 / 修復 / 細胞変換 / 再生 / 内耳障害 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
昨年度、ゲンタマイシン(GM)による内耳障害砂ネズミモデルを作成し、障害後経時的に前庭有毛細胞数が増加することを報告した。障害後の増加した有毛細胞の由来には、(1)一旦障害されるも死滅することなく修復されるrepair(修復)、(2)分裂することなく他細胞が有毛細胞に変化するcell conversion(細胞変換)、(3)細胞分裂し新たに有毛細胞が作られるregeneration(再生)、の3つの機転が考えられる。そこで本年度はin vivoにおける再生が本実験系で実際にどれ程起こっているのかを確認した。 GMの経鼓膜的鼓室内投与5日間と、同時に細胞増殖マーカーであるBrdUの腹腔内投与を断頭まで連日行った。GM投与後1週間、2週間、4週間目に断頭し、卵形嚢を摘出、4%paraformaldehyde,0.2%glutaraldehydeで固定した。脱水後araldite包埋剤で包埋し、2μm厚の連続切片を作成した。染色は各動物に対し卵形嚢の中央部分の24切片を抽出して行い、有毛細胞マーカーである抗calmodulin抗体と増殖マーカーである抗BrdU抗体を用いた2重染色を施行した。 214切片中、BrdUにラベルされた再生細胞は計18個見つかった。GM投与後1週間に7個、2週間に5個、4週間目に6個で、各週令に有意差はなかった。また同切片のcalmodulin抗体との2重染色では、先述した再生細胞は染色されなかった。 再生細胞が有毛細胞マーカーに染色されなかったことは、再生細胞が有毛細胞ではない、有毛細胞であってもまだ未熟であるなど今後解明すべき問題を含んだ仮説が成り立つ。しかし、いずれにせよ、再生細胞の数は、障害後の増加した有毛細胞の数に比し、極めて少ないことが判明した。従って、障害後の有毛細胞の増加は修復あるいは細胞変換がmajor mechanismであり、再生は存在するがminor mechanismに過ぎないと考えられた。
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