1996 Fiscal Year Annual Research Report
慢性根尖性歯周炎と真菌との関係及び水酸化カルシウムの効果に関する研究
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08771727
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
成島 浩司 昭和大学, 歯学部, 助手 (50276599)
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Keywords | 慢性根尖歯周炎 / 水酸化カルシウム / 真菌 / SEM |
Research Abstract |
臨床において難治性慢性根尖性歯周炎は、大きな課題である。しかし有効な治療方法は確立されておらず、抜歯に至ることも少なくない。近年、感染根管根尖部には各種細菌の他に、真菌の存在が報告されており、難治性慢性根尖性歯周炎との関係が疑われている。一方、数年前から根管治療の貼薬剤として水酸化カルシウムの有効性が認められつつあるそこで、難治性慢性根尖性歯周炎に罹患した歯の根尖部における真菌の存在およびその分布状況を確認し、水酸化カルシウムの抗真菌作用を検索するために、以下の実験1および実験2を行った。実験1;慢性根尖性歯周炎に罹患しており保存不可能と診断され抜歯された歯の根尖部を抜歯後、直ちに通法に従い固定、脱水、臨界点乾燥を施し、さらに蒸着処理を行った後に走査型電子顕微鏡を用いて抜去歯の根尖部における真菌の存在確認を試みた。形態学的に球菌、桿菌、および糸状菌の存在を観察することができたが、残念ながら真菌の存在および分布状態を明らかにすることはできなかった。そこで、慢性性根尖性歯周炎で保存不可能と診断された歯を抜歯しその根尖部を白金耳でかき、真菌選択培地(サブロ-寒天培地:栄研:)で分離培養したところカンジダアルビカンス様の集落形成が認められた。さらに、このコロニーをpas染色およびギムザ染色による細胞診断を行ったところ、多数の厚膜胞子や発芽管が観察され、菌種こそ同定することはできなかったが、染色像の形態からカンジダアルビカンス様の真菌だと推察された。実験2;実験1で分離培養された真菌様のコロニーをさらに培養、保存し水酸化カルシウムがこのコロニーの発育抑制活性を示すか否かを検索した。通常、臨床に用いる混水比(0.85g/ml)で練和したペースト状の水酸化カルシウムを培養中の培地上に直径約2mmの範囲で置き、コロニーの発育阻止領域を観察したところいずれも直径約6mmの発育阻止領域が認められた。実験1、2の結果から、難治性慢性根尖性歯周炎とその根尖部における真菌の存在には相関性が示唆される。さらに、感染根管治療に用いる水酸化カルシウムの抗真菌作用については、その作用機序および作用時間は明らかではないが、なんらかの抗真菌作用を持つと推察され今後、さらなる検索が必要である。
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