1996 Fiscal Year Annual Research Report
歯周組織由来,細胞凝集塊(スフェロイド)の自家移植材への応用
Project/Area Number |
08771743
|
Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
辻上 弘 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (20207377)
|
Keywords | スフェロイド / 免疫組織化学 / 歯周組織由来細胞 / オステオカルシン / アザン・マロリ-染色 / 細胞外基質 / 経時的変化 / MG63 |
Research Abstract |
我々は歯周組織由来細胞凝集塊(スフェロイド)を自家組織移植療法へ応用する可能性を検索するためその特徴を明らかにしてきた。本年度はヒト歯根膜由来細胞(HPLF)ヒト歯肉由来細胞(HGF)を用いてスフェロイドを形成させた。そしてHPLFスフェロイド構成細胞が産生したオステオカルシンについて詳細に検討する目的で平面およびスフェロイドを同一細胞を用いて経時的に検索した。その結果、平面単層培養状態でOCは発現せずスフェロイドを形成した後、その発現が観察された。また陽性コントロールとして用いたヒト骨肉腫由来細胞でOCを多く産生するMG63においては平面細胞またスフェロイド形成後、両方で観察された。このことからHPLFにおけるOCの発現は培養形態がスフェロイドに変化したことにより誘導され、細胞周囲の環境がその機能発現に影響を及ぼしていることが示唆された。さらにHPLF、HGFの平面細胞およびスフェロイドについて膠原線維染色(アザンマロリ-)を行いその特徴について検索した。その結果、細胞はコンフルエントな状態を呈したのち著明に膠原線維を産生し、HPLFはHGFと比較しその量が豊富で経時的に重層を形成することでその厚みを増していった。またスフェロイドを形成したHGFは周囲の線維化が内部に比較して著明であった。しかしながらHPLFは全体に線維化の進んだ所見が多く観察された。これらのことからスフェロイドを構成する細胞により、その特徴が異なることが示唆された。これは細胞自身の持つ基質産生能の差によるものと推察された。またスフェロイドにおこる経時的な収縮等の変化は周囲の線維化、内部の細胞外基質代謝の進行によるものと推察された。それゆえin vivoにおける移植実験では治癒の促進は認められたものの、その効果に統一性が確認されなかったものと考えられた。今後スフェロイドに含まれるサイトカイン等の経時的検索ならびに、その抽出物の影響についての詳細な検討が必要であると思われる。
|