Research Abstract |
メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)の病原性のひとつである溶血活性を解明するため,ヒト,ウサギおよびヒツジ血液寒天平板を用い,溶血活性をスクリーニング後,溶血活性の強い菌株を選択し,簡易同定キットとDNA-DNA hybridizationによる同定およびヒトとウサギ血液に対する溶血活性の定量分析をした. その結果,供試菌株76株のうち,ヒト血液寒天平板上での溶血活性では,溶血環が認められない菌株(-)が40株(52.6%),10mm未満(+)が28株(36.9%)および10mm以上(2+)が8株(10.5%)で,ウサギ血液に対する溶血活性では,-が10株(13.2%),+が57株(75.0%)および2+が9株(11.8%)であった.また,ヒツジ血液に対する溶血活性では,-が65株(85.5%),+が8株(10.5%)および2+が3株(4.0%)であった.溶血活性が強く認められた10株の菌株を簡易同定キットおよびDNA-DNA hybridizationにより同定した結果,簡易同定では,9株がS.epidermidis,1株がS.gallinarum,DNA-DNA hybridizationでは,10株すべてがS.epidermidisであった.ヒトおよびウサギ血液に対する溶血活性ん定量分析では,供試菌株7株の菌液の溶血活性は,ヒト血液に対し3.6〜13.8%,ウサギ血液に対し9.7〜19.1%の溶血活性を示した. 以上,本実験で供試した76株のMRCNSは,ウサギ,ヒト,ヒツジの順で強い溶血性を示し,なかでも,強い溶血活性を有している菌株は,すべてS.epidermidisであった.また,供試菌株の定量分析では,ヒト血液およびウサギ血液に対する溶血活性値は低かった. 今後,MRCNS菌体を機械的に剪断し,上清と沈渣に分離後,各溶血活性を測定し,溶血素を抽出するとともに、溶血素に対する熱,各種酵素および糖に対する感受性を検索し,MRCNSの溶血素を明らかにすることが必要である.
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