1996 Fiscal Year Annual Research Report
海洋軟体動物後鰓類タツナミガイの体表組織に存在する新規抗真菌物質の研究
Project/Area Number |
08780596
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
飯島 亮介 帝京大学, 薬学部, 助手 (00246018)
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Keywords | 海洋生物 / 軟体動物 / タツナミガイ / 抗真菌ペプチド / 抗バクテリアペプチド / 生体防御 |
Research Abstract |
本研究の目的は、海洋軟体動物タツナミガイDolabella auriculariaの体表・体壁部分に活性を見いだした抗真菌物質の精製とその構造決定である。貝殻の退化した巻き貝であるタツナミガイは、体表面に粘液を分泌し、海底の砂を被って生活をしている。よってタツナミガイは、貝殻におおわれた一般的な貝類に比べて微生物感染につながる微細な外傷を負うリスクが高いことが想像されたので、その体表、体壁部分に細胞傷害物質の存在を期待して検討を行った。 タツナミガイ体表・体壁部を細切り、はじめたリン酸緩衝生理食塩水で、続いてアセトニトリル・トリフルオロ酢酸/水で抽出をおこない、リン酸緩衝生理食塩水画分に強力な抗腫瘍活性を、アセトニトリル・トリフルオロ酢酸/水画分には抗真菌活性を各々検出した。本報告書に関わる研究では、有機溶媒に安定なペプチド性生体防御因子に着目する方針であったので、抗真菌活性を担う物質の精製を行った。抗真菌活性を示す画分を限外濾過、逆相カラムクロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィーで分画する事により、目的物質を電気泳動上単一のバンドとなるように精製した。その物質は約40μg/mL程度で酵母に殺菌的に作用し、また、ヒト真菌症の主要病原菌であるCandida albicansにも同濃度域で静菌的に作用した。精製物質の他の作用としては、抗腫瘍性は示さないが、抗バクテリア作用は真菌に対してより低い10μg/mL以下の濃度で認められることなどが分かった。 精製した抗真菌物質のアミノ酸配列を決定したところ、システイン2残基を含む全長15残基の新規ペプチドであることが分かり、ドラベラニンB2と命名した。現在はドラベラニンB2の大量調製と、分子内ジスルフィド結合の有無の解析、遺伝子クローニングの準備等を進行中である。
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