1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08833005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 周平 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70134658)
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Keywords | 安定同位体比 / 個体差 / 食物段階 / 海洋生物 |
Research Abstract |
昨年度は個体レベルでの中・長期的食物履歴を示す食物段階の指標として有効な安定同位体比を用いて、表層性の魚類(カタクチイワシ)における食性の個体差を調べた。 本年度は相模湾のエビ類、オニハダカ等の中・深層性の生物を対象とした。分析に供した個体は淡青丸の研究航海で得た。共試生物の胃内容物を取り除いた後、湿重量を測り、60℃で乾燥した。乾重量を測定してから、燃焼法により極低温化で二酸化炭素と窒素ガスを分離し、質量分析計を用いσ^<13>Cとσ^<15>Nを測定した。さらに光学顕微鏡下で胃内容物を観察し餌生物の組成を明らかにした。 中・深層に卓越するエビ類3種のうち鉛直移動を行い分布深度の近似するベニサクラエビとサガミヒオドシエビのσ値は近似したが、より深層に分布し鉛直移動を行わないシンカイエビでは有意に異なるσ値(σ^<13>C低、σ^<15>N高)を示し個体差も大きかった。シンカイエビの消化管内容中のデトリタスの出現頻度は77%と大変高く、このような強い懸濁物食性の傾向が高いσ^<15>値Nと大きい個体差の要因と考えられた。ベニサクラエビでは大型ほどσ^<15>N値が高い傾向を示し、消化管内容物の解析結果(強い肉食性)と一致した。サガミヒオドシエビでも同様の傾向はあったが、ベニサクラエビほど顕著ではなく、比較的小型のうちから高次栄養段階の餌を摂食することが示唆された。中層性魚類のうち顕著な鉛直移動を行わないオニハダカ属の3種のσ^<15>N値に対し、顕著な鉛直移動を行うキュウリエソでは約1.5倍の個体差を示した。オニハダカ3種のσ^<15>Nの個体差はカイアシ類種数を指標とした種多様性の大きい深度に生息する種ほど大きい値を示した。キュウリエソにおける大きい個体差は本種が表層のみならず中層をも摂餌の場として利用している可能性を示唆している。
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