1996 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞受容体を介した転写因子NF-kB活性化においてカルシウム依存性の分子機構
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08839010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅野 智彦 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (10273525)
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Keywords | T細胞受容体シグナル / シグナル伝達 / NF-kB / raf-1キナーゼ / カルシニューリンフォスファターゼ / Ca2^+チャネルブロッカー / プロテインキナーゼC抑制剤 / カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ |
Research Abstract |
T細胞受容体を介するシグナルは転写因子NF-kBを活性化し、このNF-kBにより様々の標的遺伝子の転写が誘導されて活性化T細胞に特有の表現型が現れる。このT細胞活性化の過程はT細胞をPMAとCa2^+イオノフォアで処理する事により再現でき、T細胞を活性化する方法として広く用いられている。我々はT細胞受容体刺激の下流を構成する因子を検索しNF-kB活性化シグナルを媒介するキナーゼとフォスファターゼを同定した。 T細胞受容体シグナルを誘起する方法として、PMAとCa2^+イオノフォアの併用に加えPHA刺激及び抗CD3抗体処理を用い比較検討した。T細胞受容体シグナルによるNF-kBの活性化は、ゲルシフト法及びkB結合部位依存性のレポーターアッセイで解析した。 PHA刺激によるNF-kBの活性化はプロテインキナーゼC抑制剤スタウロスポリンで抑制されなかった。一方PMA刺激によるNF-kB活性化はスタウロスポリンで完全に抑制された。これはT細胞受容体刺激によるNF-kBの活性化にはプロテインキナーゼCが必要不可欠でない事を示唆する。PHA刺激で誘導されるNF-kBに由来するレポーター活性の上昇は、ドミナントネガテイブ型のRaf-1キナーゼを強発現させると効果的に抑制された。これはRaf-1キナーゼがシグナル伝達系の構成要素である事を示唆する。T細胞受容体刺激に伴なうCa2^+流入をCa2^+チャネルブロッカーSK&F96365で抑制すると、NF-kBの活性化も抑制された。その際T細胞に恒常的活性型のカルシニューリンを強発現させておくとCa2^+の流入がなくてもNF-kBの活性化を部分的に復元することができた。同様の実験でカルモジュリン依存性プロテインキナーゼを強発現させた場合は、カルシウム流入抑制状態でNF-kBの活性化を復元できなかった。さらにT細胞に恒常的活性型のRafキナーゼとカルシニューリンを同時に発現させると、相乗的にkB結合部位依存性のレポーター活性を上昇させた。 以上よりT細胞受容体刺激の下流にあり転写因子NF-kBを活性化させるシグナル伝達系を構成する要素として、Raf-1キナーゼ及びカルシニューリンの存在が強く示唆された。それに比べ従来考えられていたプロテインキナーゼC、あるいはカルモジュリン依存性プロテインキナーゼの積極的関与は認められなかった。
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