1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08871005
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
永見 勇 立教大学, 文学部, 教授 (30116636)
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Keywords | 特別養護老人ホーム / 老人問題と家族のケア / ホスピス / 福祉施設の問題 / ホスピスと老人問題は共同体の問題 / 国民規模でホスピス運動 / 人間の成長と終焉という人間学 |
Research Abstract |
「ターミナル・ケアと人間学的意味づけ」というテーマで、永見は過去一年間、いくつかの社会福祉法人の施設を訪問する機会を与えられた:栗生楽泉園(ハンセン病患者の施設)、愛の園、憩いの園(特別養護老人ホーム)、恵泉園(養護老人ホーム)、ピ-ス・ハウス(ホスピス)。その結果以下のような福祉施設の問題を学んだ。 現状の福祉システムを継続するならば、そのシステムは早晩経済的に破綻すると言われてきた。しかし、その問題は将来の問題であるというよりも、すでにその問題が顕在化しつつある。例えば、特別養護老人ホームを考えてみると、現在は篤志家の献金と公的資金とが組み合わされて、そのシステムが運用されている。建設間近な施設は現在の九的資金の運用でどうにかその運営が行えるが、すでに、設立されて三〇年以上の施設は職員の高齢化に伴う賃金の高騰化や施設の老朽化に伴う施設環境整備の費用を捻出するための深刻な問題を抱えている。この問題は単に経済的な問題に留まらず、老人に対する具体的なケアのあり方と、老人問題を抱える家族に対するケアの問題と直結するように思われる。 現在我が国では純粋にホスピスとして運営されている施設は二つしかなく、ピ-ス・ハウスはそのうちの一つである。この施設は、様々な意味で、我が国のホスピス運動の象徴的、先駆的施設であるため、その運営は理念的に優れたものとの印象を持った。しかし、この施設に入るのは費用が高く、特定の人しか入院できないとの批判がある。今後、国民規模でホスピス運動を考えていくとき、やはり多くの問題を抱えていることを学んだ。 福祉施設が抱えている問題は国民的課題として理解する必要がある。そのためにはどうしても福祉施設の意味を人間の成長と終焉という人間学的レベルで捉え、そのことを出来るだけ多くの人々に知ってもらう必要がある。その学習を通して、ホスピスが抱える問題も老人問題も共同体の問題として再解釈する必要がある。これからの一年はその問題に絞って学んでいきたい。
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