1996 Fiscal Year Annual Research Report
ユダヤ民衆の言語・文化が中部ヨーロッパ社会に与えた影響
Project/Area Number |
08871057
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石田 基広 徳島大学, 総合科学部, 助教授 (40232318)
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Keywords | 言語学 / 西洋史 / ユダヤ学 / 比較文化 / ドイツ語学 |
Research Abstract |
今年度は、近世のドイツ系犯罪者集団の言語を伝える警察資料や史書を中心に、ユダヤ人たちの日常語に由来すると思われる表現、すなわちヘブライ語やイディッシュ語が語源と考えられる単語、慣用的表現を拾い集めた。またれらの言葉が、一部の犯罪者集団から、一般のヨーロッパ人たちへと伝わっていった経路を中世から近世のヨーロッパ社会史、またユダヤ史資料を基に再構築を試みた。ただしこの問題については、さらに多くの資料の比較検討が必要と思われる。 一方こうしたユダヤ人の言葉から形成された犯罪者集団の隠語の多くは、その本来の語源的な意味、あるいは借用もとであるユダヤ人の日常語における用法からもかなり異なっていることが確認できた。この点は、これまで欧米の研究者の間でも見過ごされてきた事実である。従ってこの事実の発見は、当研究による新しい知見であると認識している。 また本研究では、こうした意味や語法の変遷、その変化の担い手についても、関連するヘブライ語やイディッシュ語の歴史的研究、さらにドイツ語方言やジプシー語資料、社会言語学文献などと比較対照することによって、ある程度明らかにする事ができたと考える。ただし、収集、また比較した資料は限られており、今回の成果を一般化し、理論としてまとめるには至っていない。ただし現時点での成果はすでに論文としてまとめてあり、適当と思われる学術雑誌に投稿する予定である。 次年度以降は、すでに収集した言語資料の整理、またさらなる拡充を中心に作業を進めるとともに、社会史や社会言語学の手法による分析を継続していく予定である。
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