1997 Fiscal Year Annual Research Report
癒しの場所としての古今集と密教の場所論的分折とその現代的応用
Project/Area Number |
08875114
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Research Institution | Akashi National College of Technology |
Principal Investigator |
中島 康 明石工業高等専門学校, 建築学科, 助教授 (20141905)
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Keywords | 古今和歌集 / 密教 / 癒し / 場所論 |
Research Abstract |
古今和歌集について 1・古今和歌集の一つ一つの歌の表現構造と和歌集としての編集の仕方によって、古今和歌集はヴァーチュアルスペースとしての世界を出現させるしくみを備えている。 2・古今和歌集の出現させるヴァーチュアルスペースは位相空間的内部空間の性格を備えている。この内部空間は境界に囲まれているが、境界自体を含まない開空間である。 3・現実の生活世界から古今和歌集のヴァーチュアルスペースへのトリップは歌合のインスタレーションとパ-フォーマンスの内に最も完成された形式を見出すことが出来る。 4・このトリップは知覚的なインスタレーションに導かれながら、おこなわれる歌合というパ-フォーマンスによって意識変容を遂げ、より意識の相に近いイマジネーションの力によって実現されるものである。 密教について 1・密教の曼茶羅や曼茶羅に見立てられる様々な場所は、密教経典の教えに導かれてヴァーチュアルスペースとしての世界を出現させるしくみを備えている。 2・密教において出現するヴァーチュアルスペースはまずは位相空間的内部空間の性格を備えている。しかし観法の深まりとともにこの内部空間を限る境界は入我我入として消滅し、内部、外部も消滅するに至る。 3・現実の生活世界から密教のヴァーチュアルスペースへのトリップは場所の荘厳のインスタレーションと修行、修法のパ-フォーマンスの内に最も完成された形式を見出すことが出来る。 4・このトリップは知覚的なインスタレーションに導かれながら、おこなわれる修行というパ-フォーマンスによって意識変容を遂げ、より無意識相に近いイマジネーションの力によって実現されるものである。 以上のように、この二つは様々に対応する性質を持ち、いわば光と闇、または虚と闇とういべき対の構造をなし、癒しの場所作りの典型的で本質的なあり方を示していることが本研究により明かにとなった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 中島康: "古今和歌集的世界へのインスタレーションの構造" 日本建築学会近畿支部研究報告集. 第37号. 761-764 (1997)
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[Publications] 中島康: "古今和歌集的世界へのインスタレーションの構造" 日本建築学会大会学術講演梗概集. F-2. 503-504 (1997)
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[Publications] 中島康: "癒しの文化としての密教の場所論" 明石工業高等専門学校研究紀要. 第40号. 59-77 (1997)
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[Publications] 前川道郎: "建築的場所論の研究" 中央公論美術出版, 430P (1998)