1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08876065
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池上 晋 広島大学, 生物生産学部, 教授 (80011980)
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Keywords | ヒトデ / ヒストン / 二量体 / トランスグルタミナーゼ / 精子 |
Research Abstract |
クロマチン(染色質)は4種のコアヒストン(H2A、H2B、H3、H4)各2分子からなる8量体にDNAが約2回巻き付いたヌクレオゾームを基本構造とし、さらにヒストンH1の結合を加えスーパーコイル、スーパーソレノイドなどの高次構造を形成している。本研究は、イトマキヒトデ精巣ヒストン画分に存在する、ヒストンd(H2B-H4)と同様に、電気泳動上でコアヒストンよりも移動度の遅れたヒストン変異体分子群(移動の速いものからp29A,p29B,p29C,p29D,p29E,p29Fと命名)のうちの1つ、p29Aを新しい精製法を用いて精製し、構造解析を行った。さらに、このヒストン変異体分子を認識するポリクローナル抗体を作製した。また、トリ赤血球核のヌクレオソーム画分を用いたin vitroでのトランスグルタミナーゼによる架橋実験を行い、ヌクレオソームを形成しているヒストン分子がトランスグルタミナーゼの基質となり、2量体化ヒストンが形成されるか否かを調べた。その結果から、p29AはヒストンH3のGln残基とヒストンH4のLys残基でε-(γ-Glu)Lys架橋が生じ、2量体化していることが判明した。その架橋部位として、ヒストンH3の19位のGln残基とヒストンH4の5位のLys残基、ヒストンH3の5位のGln残基とヒストンH4の5位のLys残基、ヒストンH3の5位のGln残基とヒストンH4の8位のLys残基、ヒストンH3の5位のGln残基とヒストンH4の12位のLys残基の4種が存在することが判明した。このp29Aをヒストンd(H3-H4)と命名した。次に、ニワトリ赤血球から調整したモノヌクレオソームを基質として、モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いて反応を行い、反応物からヒストン画分を分離した。これをSDS-PAGEで分離し、抗CP1抗血清をプローブとしてイムノブロット解析を行った。その結果、トランスグルタミナーゼ処理したモノヌクレオソーム画分にヒストンd(H3-H4)の存在が認められた。この結果から、ヌクレオソームを形成するヒストンのN末端領域の、すくなくともヒストンH3の19番目のGln残基とヒストンH4の5番目のLys残基がトランスグルタミナーゼの基質となることが明らかになった。
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