1996 Fiscal Year Annual Research Report
自然発生高脂血症モデルマウスの樹立と原因遺伝子の解明
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08877163
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
松島 芳文 埼玉県立がんセンター, 研究所・実験動物室, 主任研究員 (10094955)
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Keywords | 自然発症 / 高脂血症 / アポE / 動脈硬化 / 疾患モデル / ノックアウトマウス / 脂質代謝 / 日本産野生マウス |
Research Abstract |
日本産野生マウスの近交系化の途上で高脂血症マウスを発見した。血清総コレステロール値は生下時に1,800mg/dlを示した。また電気泳動によるリポタンパク像ではVLDLの増加,HDLの減少および正常マウスには認められないIDLが発現していた。さらにアポE抗体を用いたウエスタンブロットおよびアポEのcDNAをプローブにもちいたノンザンブロットなどの結果から本突然変異マウスの高脂血症の原因は,アポE遺伝子の完全欠損であることを明らかにした。 これまでにアポE欠損マウスは,ジーンターゲッティングにより作成されたノックアウトマウスが報告されている,しかし本自然発生アポE欠損高脂血症マウスと比較した結果、血清総コレステロール値,トリグリセライド値,黄色腫の進展などいずれもノックアウトマウスのほうが軽度であり,アポE欠損のみでは本高脂血症の説明の付かないことがわかった。また,本高脂血症遺伝子をラボラトリ-マウスに導入したコンジェニックマウスを作出中であるが,その過程においても日本産野生マウスに,脂質代謝に関連した新しい遺伝的原因の存在が示唆された。 これまでに自然発症の高脂血症マウスの報告は国内外にもなく,モデル動物として確立するために遺伝育種学的検索を行った。その結果,本高脂血症は常染色体性の劣性遺伝によって遺伝し,劣性ホモ個体の雌雄に発症することを明らかにした。外見的には腹部,前肢部,眼瞼周囲において黄色腫の進展が著しく,雌では乳頭部の肥厚が認められ,保育性が悪かった。そこで,継代維持方法を検討した結果,正常ヘテロ雌と異常ホモ雌との交配によって,安定した継代と実験用個体の供給が行えることがわかった。現在F7代に至っている。
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