1996 Fiscal Year Annual Research Report
C-Metを介した細胞内情報伝達機構が口腔癌の浸潤に及ぼす影響
Project/Area Number |
08877305
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
松本 堅太郎 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (30221592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 博之 福岡歯科大学, 歯学部, 助手 (50279311)
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / c-Met / 癌の浸潤・転移 / インテグリン / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
現在我々が保有している口腔扁平上皮癌細胞のうち、比較的低浸潤性の細胞形質を呈するCa9-22細胞にc-Metの遺伝子導入を行った。G418含有培養液で選択培養されたクローンがいくつかとれたが、ウエスタンブロットの結果これらのクローン間におけるc-Metの発現レベルはそれぞれのクローン間で異なっていた。比較的高いレベルでc-Metを発現しているクローンを用いて、細胞の運動性や細胞分散などについて実験を行った。まず、クローン上に発現しているc-Metが機能しているかどうかについて検討する目的で、HGFを添加して同受容体のチロシンリン酸化を検討したところ、クローン上に発現しているc-Metのチロシンリン酸化は正常に起こっていることが認められた。同クローンならびにCa9-22親細胞との間の運動能変化をボイデンチャンバーを用いて検索した。HGF添加あるいは非添加の条件下で両細胞間に運動能の大きな差は認められなかった。また、Ca9-22親細胞ならびに同トランスフェクタントともにHGF添加による細胞分散(scattering effect)は観察されなかった。さらにHGF添加時における同クローンの浸潤能の増強は明らかでなかった。これらのことによりc-Metの発現増強は、低浸潤性の癌細胞が高浸潤性の細胞形質を獲得するのに必要かつ充分な条件でなく、癌細胞間における細胞内情報伝達機構の違いが癌細胞の浸潤性関与している可能性が推察された。加えて、細胞外マトリックス受容体インテグリンについて研究を行ったところ、高浸潤性と低浸潤性の癌細胞間にはインテグリンの発現様式には大きな差が認められなかった。しかしながら、インテグリンの基質特異性はこれらの細胞間で異なる結果が得られ、このことが癌細胞の浸潤能と関連している可能性が推察された。このことについてはすでに報告を済ませ、今後さらに詳細な検討を行う予定である。
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