1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08877365
|
Research Institution | St. Luke's College of Nursing |
Principal Investigator |
五十嵐 尚美 (加納 尚美) 聖路加看護大学, 看護学部, 講師 (40202858)
|
Keywords | 性暴力 / 強姦神話 / 外来看護 |
Research Abstract |
本年度の実施結果としては、3段階のプロセスを経て研究の基礎作りを行うことができた。以下に段階ごとに結果をまとめる。 1)国内・海外の文献調査:女性への性暴力の現状と社会的な取り組みについて、コンピューターでの文献検索、各種女性センター、国際関係連絡機関などを通じて収集し、分析検討を行った。その結果、欧米においては1970代以降「性暴力」という概念が問題提起され、その後実証的な報告も徐々に増加し、被暴力女性が心身に受けた障害が分析され、適切なケアやカウンセリングの方法論に発展しつつある。国内の文献では、1990年代に入り、ようやく女性学関連領域で関心をもたれてきているが、その実証的なデータは非常に少ない。しかし、被暴力女性を支援する民間団体やシェルターからの事例報告、自助グループの会報を収集でき、同時に国内ではこうした資料が実態を知る手がかりになっている状況であることがわかった。 2)東京都s区における産婦人科外来および救急外来での実態調査:2ヶ所の病院において過去1年間の外来記録により性暴力を受けた女性来院者を調べたところ、該当する患者は数名であった。それらの事例を検討したところ、受入れ側の看護・医療側に「性暴力」についての理解が乏しい場合に、記録にもまた医師や看護婦にも「被暴力女性」と認知され難いことがわかった。同様な事がこれらの病院を管轄する警察での聞き取り調査でも明らかになったことから、支援者の認識が今後のケアや対策に影響する可能性が示唆された。 3)性暴力についての看護者の認識とその変化要因:b病院外来の5人の看護婦を対象に1年間で計6回の「性暴力をうけた女性へのケア」について学習会を開催し、2回毎に面接をした。その結果、「強姦神話」を根強く持つ間は「性暴力」を受けた女性と外来で遭遇しても、本人の訴えを疑い否定することがあるが、自分の偏見に気ずくと外来で被害者をキャッチし受容しやすくなる事がわかった。 今後は、被害状況と被害者からの声やニーズを把握し、事実の実証的な解明とともに、外来部門における看護者の認識についてさらに数と範囲を広げて調査し、性暴力を受けた女性へのケアの内容とシステムの検討と介入を探求する必要性がある。
|