1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08877365
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
五十嵐 尚美 (加納 尚美) 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 講師 (40202858)
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Keywords | 性暴力 / 強姦神話 / 医療機関の受け入れ / 被暴力女性 / 看護婦の認識 / 医師の認識 |
Research Abstract |
1)性暴力についての看護者の認識とその変化要因: 研究目的:前年度結成した学習グループのフォローアップを行い、看護婦の性暴力についての認識の変化とその変化要因について引き続き分析する。 研究方法:今年度も2ヶ月に一回、計6回の学習会を実施した。その中の1回は、当該地域の産婦人科医から、性暴力被害者の事例の紹介の紹介と医師としての被害者についての認識に焦点を当てたfocus group disscussionを行い、テープ録音の承諾を得て逐語に再現し質的な分析材料とした。また、グループ学習に継続的に参加者b病院外来勤務経験者の4名の看護婦を対象に中間面接を行った。 結果(1)性暴力被害者についての学習メンバーの認識の変化に、最も影響を与えたプログラムは強姦救援センターのスタッフからのスーパーバイズであった。それまで、学習メンバーは強姦神話について知ってはいたが学習者自身もそれらを持ち、それゆえ被害者を見過越してきた可能性がある。(2)学習メンバーは、性暴力の本質について理解を深める中で、日々の臨床経験において被害者に積極的に出会い、自信をもって話を聞いたり、ケアをしたりできるようになってきた。(3)学習メンバーにとって、継続的な学習会は、性暴力被害者とそのケアについて視点を広げ、思考や認識を深めるだけでなく、ネットワークの拡大にもつながっていった。今後の研究の方向としては、このグループ学習の結果をふまえて、一般的な性暴力被害者への看護ケアに関する看護婦や医療従事者への教育プログラムとその効果を検討する必要がある。この結果は学会に投稿中である。 2)東京都2区における医療機関での実態調査: 研究目的:医療機関における性暴力被害者・被暴力女性の受け入れの実態を明らかに疫学に被害者の実態を記述する。また、医療機関の医師の被害者に関する認識を明らかにする。 研究方法:医師、看護婦へのヒアリングを行い、かつ女性問題研究グループの不特定多数の女性への実態調査の報告を参考にして調査票を作成した。過去の文献では、この種の調査は日本では全くされていない。調査対象は診療所、病院の医師とした。調査票は、医師が身体的な傷害の訴えに隠されている性・暴力被害を把握できるように工夫されており、これによって被害者の実態をある程度の正確性をもって把握することができる。 研究結果:1)の学習メンバーの勤務経験があるb病院の管轄地域である2つの特別区において、1998年3月末に眼科・耳鼻科・皮膚科の単科以外の診療所312ヵ所と病院38ヵ所の医師を対象に調査票を郵送で配布した。現在回収率は1割程度であり、医師の性・暴力被害者の認識によって、被害者把握が異なる傾向がみられる。また、性暴力被害者の事例報告は少数であるが深刻な身体的な外傷が報告されている。一方で、被害者の治療や相談に関して必要性は認めるものの、具作的な対策までの動きは希薄である。今後の返送分のデータ分析を行い実態を明確化すること、また、この結果を踏まえて、調査票の再検討を行い、別な地域、あるいは特定の専門科を選択するなどの方向で大規模な調査を実施する必要性がある。
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[Publications] 加納尚美、山本弘江: "過去10年間における性暴力被害者への看護、医療の動向" 茨城県母性衛生学会誌(第18回学術集会発表予定). 18(5月予定). (1998)
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[Publications] Naomi Kano,et al: "Nurse's understanding of sexual abuse victim-Focus on changes throgh a study group" (学会発表予定)Japanese Academy of Nursing Science Third International Nursing Research Conterence. (9月予定). (1998)
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[Publications] 加納尚美(堀内成子編): "看護専門科目シリーズ.母性看護学:性暴力被害女性への援助" エイド出版(5月発行予定), (1998)