Research Abstract |
昆虫は多様な形態を持っているが,そのような形態がどの様に形成されるかはまだほとんど研究されていない。特に,昆虫の擬態は興味を引く現象である。そこで,擬態のメカニズムを研究する目的で,昆虫のホメオボックス遺伝子に着目し,その解明を試みている。さらに,ホメオボックス遺伝子の発現調節に関与する因子についても調べる必要がある。これまでの昆虫に関する研究は,主にショウジョウバエを用いて行われ,その他の昆虫についてはほとんど何も研究されていない。そこで,当初研究を予定していた研究材料であるカマキリをあきらめ,容易に入手可能であり,しかもカマキリと同じ不完全変態類であるコオロギに着目し,コオロギを用いてまず,昆虫の基本的な実験技術を確立する必要があることがわかった。そこで,コオロギの飼育,遺伝子の単離法,whole-mount in situ hybridization法などを改良し,昆虫を用いた研究の基礎を築きつつある。これまで,ホメオボックス遺伝子として,Dll,al,Msh,Ubxなどをクローニングした。シグナル分子として,hh,wg,60Aなどをクローニングした。特にhhに関しては発現パターンをwhole-mount in sit u hybridization法により観察することが可能となり,肢芽,体節後部,複眼,単眼,前腸に強く発現していることを発見した。ホメオボックス遺伝子については,さらに長いクローンを用いてwhole-mount in situ hybridizationを行う予定である。
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