2008 Fiscal Year Annual Research Report
韓国における意思決定の多層性と夫妻間ジェンダー不平等:日本との比較
Project/Area Number |
08F08007
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
永瀬 伸子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授
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Keywords | 意思決定 / 意思決定の多層性 |
Research Abstract |
韓国における既存の夫妻間の意思決定研究は、主に消費決定は妻に、財産管理権は夫にという役割分担がなされていることを明らかにしている。筆者がかかわった最近の量的調査〔お茶の水女子大学F-GENS韓国(ソウル)パネル調査:第1年度報告書,2004〕でもこの関係は確認された。しかしながら、そうした役割分担はなぜ起こっているのか、また意思決定においては暗黙には誰の利益が優先されるのか、といった意思決定過程の多層性の分析はまだなされていない。したがって、本研究では結果としての役割分担ではなく、そのような役割分担に至る潜在的な権力関係を、意思決定のプロセスに注目し、質的に聞き取ることで、解明することを試みた。このため、分析対象を、韓国の首都圏に居住する夫妻年齢25歳から44歳とし、共働きカップル3組と妻が専業主婦のカップル3組(子供の有無は問わない)を選定し、深層面接法による質的研究方法を用いて調査を行った。特に注目された結果は、住宅に関する意思決定である。専業主婦世帯では、住宅購入の決定は夫がしていたが、共働き世帯では、住宅を買うか買わないか、家を建てる地域、時期などを、夫だけでなく、妻もともに協議して決定している。住宅を所有するために、妻の収入も資源となること、また居住地は、妻の今後の収入稼得見通しに影響することから、妻も住宅の共同の意思決定者になると考えられる。とはいえ、どのようにローンを組むか、どういう住宅に投資するかという具体的な事案になると、夫に委任する傾向が強いことも確認でき、財産的意思決定において妻が積極的意思決定者であるとは言えない状況もうかがえ、この点は今後の課題とする。
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Research Products
(4 results)