2009 Fiscal Year Annual Research Report
体積保存条件付き放物型および双曲型偏微分方程式の数理解析
Project/Area Number |
08F08017
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
SVADLENKA KAREL Kanazawa University, 数物科学系, 准教授
|
Keywords | 偏微分方程式 / 自由境界 / 積分拘束条件 / 数値計算 / 変分原理 |
Research Abstract |
本研究では、平面と接触する膜の挙動を表す方程式を扱った。方程式中に退化作用素、デルタ測度や非局所的な項が現れるのが特徴で、流体のモデルと連成させることにより平面上の液滴の運動や血管内の血流など様々な現象をモデル化できる。方程式の一般形はχ_<u>0>αU_<tt>+βu_t=Δu-γχ_ε'(u)+χ_<u>0>λとなる。ここで、χは特性関数、χ_εはその平滑化、λは体積の拘束に由来する非局所的な項である。 問題の解析は、数値計算と理論解析という二つの方法で行った。膜の数値計算では、20年度の間得られた解析的な結果をもとに、主なツールとして変分原理に基づく離散勾配流法を適用した。これは、時間差分空間微分型汎関数の最小化問題を、発展方程式の近似解として構成するものである。流体との連成を考えるとき、流体の体積保存を考慮したエネルギーの均衡が不可欠になるため、これまでの計算はコストの高い陰的スキームに限られていた。しかし、本研究では制約条件つき離散勾配流を用いることにより、連成問題を陽的に解く安定なスキームを構成できることを発見し、心臓や血管の中の血流、平面上の液滴の運動、流体を詰めた弾性体の殻の衝突など、膜と流体の連成問題の解析を可能にする手法を確立した。 理論解析では、非局所的な項をもつ放物型自由境界問題(α=0)に対し、一意のヘルダー連続な弱解の存在を示され、結果をまとめた論文はIndiana University Mathematics Journalに掲載された。証明では正則化した問題に対し離散勾配流法を用いて解の存在と一様な評価を得て、もとの問題の解を構成した。現在は、上記の方程式で平滑化をなくした問題u_t=Δu-γχ_<u>0>'(u)+χ_<u>0>λについていくつかの結果が得られつつある。その一つは、Γ-収束性を用いて放物型自由境界問題に対するgeneralized minimizing movementを構成するものである。さらに、phase-field法の近似において自由境界上のmonotonicity formulaを導くことにより、幾何学的測度論の手法によるベクトル型問題の解の精密な構成が可能であると思われる。
|
Research Products
(7 results)