2008 Fiscal Year Annual Research Report
強い電子相関を示す有機伝導体の非線形熱電現象の探索
Project/Area Number |
08F08022
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺崎 一郎 Waseda University, 理工学術院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ABDEL-JAWAD Majed 早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機導体 / 電荷秩序 / 熱起電力 |
Research Abstract |
BEDT-TTFを基本骨格とする電荷移動錯体は、モット絶縁体から超伝導にいたる豊富な物性を示す有機導体である。最近その中のひとつであるθ型のBEDT-TTF塩が低温で3桁におよぶ非線形伝導を示すことが見出された。さらにある条件下では、この有機導体は直流電圧の印加によって交流電流を発振する。本研究では、この発振状態を熱起電力によってとらえようというものである。 第1年度である今年度は、有機導体の熱起電力と抵抗率の同時精密計測を可能とする測定システムを構築し、θ-(BEDT-TTF)_2RbM(SCN)_4(M=Zn,Co)の急冷相の輸送特性を精密に測定し、その電子状態を議論した。この系は195Kで格子変形を伴う電荷秩序転移を起こし絶縁体となる。この転移が1次転移であることを利用して、転移点を急冷することによって電荷秩序の非平衡相を作り出すことができる。 この研究で見出したことは2つある。ひとつは急冷相の熱起電力が近似的にAT+Bと書けることである。ここでA,Bは適当な定数、Tは絶対温度である。これは、層状コバルト酸化物や高温超電導体で見られる熱起電力と酷似しており、これらの系の電子状態にある種の共通性があることを示唆する。われわれはこれを、単一のキャリアが遍歴性と局在性をあわせ持っていると仮定して解析を進めた。 もうひとつの発見は、抵抗および熱起電力に見られる一定温度における緩和現象である。この緩和はスピノーダル分解や核生成の理論で半定量的に理解でき、電荷秩序の形成がどのような中間状態を経由するかについて理論的な制限を与えることができる。
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Research Products
(4 results)