2008 Fiscal Year Annual Research Report
断層帯の中速〜高速領域における摩擦特性に対する水の影響:フィールドと実験の融合
Project/Area Number |
08F08027
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
嶋本 利彦 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HAN Raehee 広島大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 断層の力学 / 摩擦熔融 / 脱水分解 / 高速摩擦 / ナノ粒子摩擦 / 摩擦構成則 / 断層ガウジ / 地震発生機構 |
Research Abstract |
この10年間の高速摩擦の研究によって、地震発生時の摩擦加熱によって断層は著しい強度低下をおこすこと、それによって断層はより不安定になって大地震の発生が促進されることが明らかになった。本研究では、それらの研究をさらに発展させて、(1)断層の高速摩擦に対する水の影響に関する実験的研究、(2)断層帯スリップ・ゾーン中の変形機構と地震性断層運動の地質学的証拠、および(3)ほとんど体系的な研究がなされていない中速領域において断層の摩擦の性質を調べることを試みたい。これらの研究によって低速摩擦から高速摩擦まで水の影響を含めて理解でき、地震の発生機構がより総合的に解明されることが期待できる。 本年度は、断層ガウジの高速摩擦実験と天然の断層岩の観察によって地震性断層運動時に層状鉱物の同心円状組織が形成されることを示し、この組織が地震性断層運動の証拠となる可能性があることを示した(実験の立ち上げに貢献)。また、マントルの岩石の摩擦熔融実験を初めて体系的におこない、摩擦熔融の理論で実験結果が説明できることを示した(ほとんどの実験をおこなった)。これらの成果は2編の論文として印刷中である。 新しい研究として、ナノ粒子から構成された断層ガウジを用いた摩擦実験、および化学反応が起こりうる石英と方解石を組み合わせた高速摩擦実験をおこなった。その結果、ナノ粒子ガウジはおそらく粒子の相互回転によって非常に低い摩擦を示すこと、および地震性断層運動が起こる短い時間に石英と方解石の化学反応がおこることを初めて示した。これらの成果は、摩擦熱による温度上昇に加えて、ナノ粒子の形成と摩擦熱に誘発された化学反応も断層の強度低下に大きく貢献する可能性が高いことを示した点で極めて重要である。これらの成果は2編の論文として投稿し、8つの学会発表で報告した。
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Research Products
(10 results)