Research Abstract |
本年度は火山灰土壌および沖積土壌における様々な稲の重金属吸収能力について試験をおこなった。その結果,供試した植物種の伸長バイオマスは,沖積土壌よりも火山灰土壌で小さいことがわかった。また,稲の品種間で比較した場合,土壌型に関係なくチョーコウココ,WRC28,WRC30が最も高い重金属集積特性を示すことがわかった。続いて,低濃度の重金属溶液を用いたモデル実験により,根部の細胞壁と根滲出液の重金属溶解能力についても試験した。その結果,根の細胞壁による重金属可溶化試験においては,WRC30とササニシキが他の品種よりもカドミウムと鉛をより可溶化することがわかった。また,ニッポンバレは他の品種より亜鉛をより可溶化することがわかった。しかし,共試植物から収集・濃縮した根滲出液は,鉛を除いて有意に重金属を可溶化しなかった。これらの結果から,根細胞壁による重金属可溶化が,おそらく稲の比較的高いカドミウムや鉛,亜鉛の集積の主要な原因であることを考察した。これらの試験研究活動に加えて,国内外の多くの学会に参加した。また,ポルトガルのコイムバラ大学を2009年11月23~2009年12月1日に訪問し,重金属汚染土壌における重金属超集積性植物による環境修復能力の活用,ならびに,重金属集積性植物に関する最新の根圏プロセスの探求について議論や意見交換をおこなった。現在は重金属の可動性と植物重金属吸収における低分子有機酸などの金属錯体の役割について焦点を当て,様々な植物種の進化による重金属汚染土壌における重金属の可動性と吸収に関する研究に取り組んでいる。
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