2009 Fiscal Year Annual Research Report
環境変化によるあて材の微細構造と内分応力の適応機構の解明
Project/Area Number |
08F08105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 淳司 Kyoto University, 生存圏研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG Yue 京都大学, 生存圏研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | あて材 / 成長応力 / 偏心成長 / 安定化 / リグニン / 力学的性質 |
Research Abstract |
自然環境の変化に対応して、より良い安定化を獲得するための"あて材"の形成、"成長応力"の発生などの樹木特有の物性発現機構の解明は、生物資源材料の利用の根底に関わる重要な課題であり、かつ本研究の目的である。一般に、広葉樹は幹や茎の上側に偏心成長し、あてを形成する。一方、針葉樹は下側に偏心成長し、あてを形成する。しかし、我々は、広葉樹のサンゴジュの枝が特異な偏心成長することを見出した。20年度では、まず第一に、サンゴジュの枝は、下側に偏心成長を示すものの、相対的に大きい成長応力は偏心側ではなく、正常側(枝上側)に発生していることを明らかにした。また、通常のあて材のような成長応力の分布と高い値が認められなかった。さらに、微細構造も正常材とほとんど変わりなく、あて材の形成を確認できなかった。以上の結果は、樹体の安定化のために、あて材形成によるルート以外に、まだ明らかにしていない新しい安定化機構が存在することを意味する。 そこで、21年度では、樹木のバイオメカニクスを解明するために、本研究者、枝の力学的性質を調べた。そして、枝の両側の化学成分を分析するとともに、それと力学的性質との関連性を検討した。その結果、枝の上側と下側は、弾性、粘弾性的性質及びリグニンの構造が異なることがわかった。そのため、刺激のbalance変動に対して、枝が速やかに応答できると思われる。さらに、枝の下側に多く存在する縮合型リグニンが細胞壁を補強するため、枝の成長ひずみや力学的性質が制御されると考えられる。従って、この新しいバイオメカニカルな機構を解明することは、樹木の力学的安定化に関する複雑な生物機構の理解に不可欠である。
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