2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける高麗美術の領分-写経と仏画の観点から-
Project/Area Number |
08F08303
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井手 誠之輔 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Jongmin 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | 高麗仏画 / 高麗写経 / 高麗版大蔵経 / 法華経写経 / 写経生 / 法華経信仰 / 岐阜正法寺 / 奈良談山神社 |
Research Abstract |
1)研究会の開催 大学院のゼミの時間帯を中心に、高麗仏画と高麗写経とのもっとも異なる点として、同時代の元仏教との関係をとりあげ、法華経写経を中心に写経に利用されているテクストの分析を行い、13世紀から14世紀にわたる高麗写経で使用される文字テクストが、基本的に1300年頃を前後して、高麗版大蔵経から元で流通していたテクストに変化することを確認した。このことは、同時代の高麗仏画が相対的に高麗独自の展開を強めていたことと大きく異なっている。 13世紀末から元がたびたび高麗の写経生を徴発し、元の都大都で中国側のテクストにもとづいて写経が実施されたことは、この間の事情を説明しうる。じっさい、中国側に規範となるテクストのない40巻本華厳経では、14世紀になっても高麗版大蔵経が文字テクストとして参照されている事実とも矛盾しない。高麗写経における規範となる文字テクストの交替は、自ずと、14世紀の高麗写経において、諸形式が大きく変化したことの理由にもなる。また高麗仏画の如来像にみられる卍字や千輻輪文という特色が、写経見返し絵ではつよい規範性をもたないことの説明ともなる。最終年度にあっては、こうした研究成果をより実証的に明らかにすべく、14世紀の紀年銘をもつ法華経写経と法華経信仰にかかわる仏画との違いを明確にし、本研究のとりまとめを行うとともに学会で発表する。 2)作品調査 奈良談山神社所蔵法華経写経、奈良法輪寺所蔵観経十六観変相図(11月)及び岐阜正法寺所蔵法華経(11月)について調査を行ったほか、岡山県立美術館「朝鮮王朝美術展」(6月)の出品作を熟覧し、また高麗時代の仏教文化の重要寺院について韓国で巡検を行った(10月)。 3)研究成果の公表 朝鮮王朝前半期の写経について、高麗写経との違いを中心に、東方学会国際シンポジウムで発表した。
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Research Products
(4 results)