2008 Fiscal Year Annual Research Report
漢訳マニ教文献におけるイラン語宗教概念の翻訳方法にみられる言語文化的背景
Project/Area Number |
08F08304
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 豊 Kyoto University, 文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOSA Gabor 京都大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | マニ教 / シルクロード / 中央アジア / 敦煌文書 / ソグド語 / トルファン文書 / 寧波絵画 / 混淆宗教 |
Research Abstract |
マニ教はメソポタミアに生まれた教祖マーニー(216-276/7)が唱道した宗教であるが,7世紀までには中国まで伝導され,漢文で翻訳されたマニ教文献が作られた.9世紀以降の大弾圧によりその大半が失われたが,前世紀はじめ敦煌やトルファンなど中国西部,シルクロードの東端地域からは数点の教典が発見された.イラン語から翻訳された漢訳教典の理解には,イラン語のマニ教教典との対照は不可欠である.20年度後半には,漢訳教典に詳しいKosaと主にイラン語を扱う研究代表者の共同研究の成果として,敦煌出土の漢訳教典について,従来の研究における漢字の読みを訂正した.訂正により得られた読み「火海」は,マニ教の宇宙論において特別なモチーフであり,それをイラン語マニ教教典のみならず,西方エジプトで見つかるコプト語の教典や,ラテン語のマニ教関係資料に言及を求め,漢訳教典では仏教の輪廻の思想の影響が強く表れていることを明らかにした.この発見はKosaによって英文論として執筆された.別に,13-14世紀中国江南において秘密結社化していたマニ教信者たちが残したマニ教絵画を日本で発見し,該絵画にに描かれたシーンや尊格およびその他の人物を,マニ教教典の内容と比較し,確かにマニ教絵画であることを証明するとともに,マニ教教団がこの絵画をどのような目的で使っていたかについても論じた.これについては吉田が論文を発表し,新聞紙上(読売新聞2009.4.17)でも取り上げられた.
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Research Products
(4 results)