2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08F08307
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 良平 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TRENSON Steven 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 醍醐寺 / 龍神信仰 / 舎利信仰 / 宝珠信仰 / 室生山 / 三輪山 / ダキニ天 |
Research Abstract |
本年度の研究では、醍醐寺の龍神信仰と中世日本の王権イデオロギーとの関わり、そして、その龍神信仰の室生山や三輪山への広がりを考察しました。 この研究の成果として、まず、釈迦如来の遺骨(仏舎利)と龍神の宝珠(玉)との同体説が、醍醐寺の密教の根本教義であった点が判明しました。醍醐寺では、龍の宝珠が、天地陰陽及び両部曼荼羅を一体化する霊物、しかも、天皇の心(精神)の象徴として信仰されたのです。この醍醐流の密教の教義が地方へ広がると、同流の龍神信仰は地方の宗教形態の中に吸収されて行きました。このように、醍醐流の龍神信仰は室生山と三輪山などへ伝承され、この龍神信仰こそがこれらの山と縁が深い両部神道(真言密教と神道を融合する宗教)の基盤となったと考えられます。両部神道における密教的思想の中枢は、醍醐寺の龍神信仰であるのです。 なお、研究の結果、龍神の宝珠の性がより適切に把握できるようになりました。宝珠は、原則として金剛界(男性の原理)と胎蔵界(女性の原理)を合一させる霊物ですが、中世密教の聖教に、金剛界は両部不二でありながらも男性の像、胎蔵界は同じく両部不二でも女性の像であると言われています。言い換えれば、たとえば金剛界について言えば、これは内に両部不二の世界でも、外に両部の一部(男性原理を表す一部)だけを見せる曼荼羅なのです。これは中世の宗教儀礼と王権イデオロギーの有様を把握するためには、肝要な知識です。 さらに、中世日本における、ダキニ天・如意輪観音・愛染明王など、宝珠の徳を具現化する女性の神の流行したところに、以上の宝珠の性の二元論の影響が認められるという論点を展開しています。そして、これらの女性の神の流行を促した要因として、醍醐寺の龍神信仰を挙げた点に、本研究の意義があると言えます。
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Research Products
(1 results)